LGBTという言葉が浸透してきたものの、まだまだ当事者にとって過ごしにくい現実もあります。

職場、学校、飲み会など、さまざまなシーンで困った経験をしたという声を耳にします。そこで、実際に当事者がどのようなことで生きづらさを感じているのか、LGBTを取り巻く環境とともにお話します。

初めに
IRISではLGBTにも、その他のマイノリティにも親切な企業でありたいという気持ちからLGBTsフレンドリーを掲げていますが、本記事はLGBTに関する内容の為、LGBTsではなくLGBTという言葉を使用していきます。

LGBTが職場で困ること

LGBTが職場で困ること

LGBT当事者が過ごしやすい職場環境が十分に備わっている会社は少ない印象です。ふとしたときに出てくる話題や同僚の態度、会社の制度など、たくさんの課題があります。

一緒に見ていきましょう。

周囲の理解不足により、差別やハラスメントを受ける

LGBT当事者が周りにいないと思っている人は多いかもしれません。しかし、日本ではLGBTを自認している人の数は、11人に1人との統計が出ています。

その数、左利きの人と同じ割合ともいわれています。職場で左利きの人が特別視されることはなくても、LGBT当事者が差別やハラスメントを経験することは珍しくありません。その理由として、会社における認識のアップデートがされていないことが挙げられます。

徐々に会社としてはLGBT推進への取り組みや、社内でのパートナーシップ制度が増えていく一方、働く人の認識が留まってしまうという問題もあるのです。

ジェンダーやセクシュアリティとしてでなく、一人の人間として認識することで、当事者が過ごしやすくなり、結果会社全体のよりよいパフォーマンスにつながります。

カミングアウトができず、自分らしく働けない

特に職場でのアウティングは大きな問題として取り上げられています。アウティングとは、第三者が本人の許可なくセクシュアリティやジェンダーをバラしてしまうこと。一人にカミングアウトしたからといって、誰にでも伝えていいわけではありません。

筆者も同様、メディアでカミングアウトしているものの、私のセクシュアリティについて知らない親戚や友達もいます。本人のタイミングや考えを尊重することが大事です。

また、職場ではカミングアウトしたくてもできない状況があります。

先ほどもお話したとおり、カミングアウトしても偏見が向けられたり、差別、ハラスメントを受ける可能性もあります。結果、自分らしく働けないと悩む当事者が出てくるのです。そうならないためにも、会社の制度、働く人の認識は大事です。

困りごとを相談しづらい

何か悩み事があったとき、一人で抱え込まずに誰かに相談したいという人は多いはず。ですが、それができない現実があります。

例えば、ゲイであることを職場でアウティングされてしまったとしましょう。ですが、周りに同じ境遇の人がいなかったり、理解してくれそうな人がいなければ、なかなか相談はできません。

一人で我慢しようとしたり、最悪の場合退職してしまう当事者もいます。職場で少しでも誰かに頼れるハードルを下げることが求められます。

LGBTが就活するときに困ること

LGBTが就活するときに困ること

では、LGBT当事者が就活時に困ることを挙げていきます。これから就活を控えている人、就活中の人はぜひ参考にしてみてください。

LGBTフレンドリーな企業なのに全くフレンドリーじゃなかった

よく、求人ページなどに「LGBTフレンドリー」を掲げる企業を目にします。しかし、なかにはどのような点でLGBTフレンドリーなのかが曖昧な企業も多くあります。

実際に面接を受けて違和感をもったり、入社後に嫌な経験をした当事者はいまだにいるそうです。

LGBT当事者の就活を応援するJob Rainbowのようなサイトを活用するのもいいかもしれません。

LGBTが安心して働ける職場の情報が少ない

就活時に説明会に参加したり求人ページを見て、どのような企業かをみることは多いでしょう。しかし、そこでLGBTの取り組みやダイバーシティ、インクルージョンなどの考え方について紹介されていても、会社内でどこまで反映しているかはわかりません。

本当の情報を知る点では、まだまだ困難であることが課題として挙げられます。

面接官の理解不足でハラスメントを受けた

面接時にカミングアウトをした際、面接官から必要以上にセクシュアリティやジェンダーについて問われたり、偏見を向けられたという当事者が多くいます。結果プライベートな話だけが進み、会社について全く聞けなかったこともあるとか……。

就活時にカミングアウトをしたくても、他の就活生と同じように面接官と会話ができないのは居心地が悪いですよね。そうならないためにも、まずは認識のアップデートが求められます。

就活時の服装に抵抗がある

就活時の服装でスーツを指定する企業も多く存在します。と同時に、自分の性自認で好きな服装を着て就活するのに、抵抗を覚える当事者は多くいます。

例えば、「自分は戸籍上男性なので、メイクやスカートは身につけられない」「性自認は男性だが、ネクタイを締めて就活するのには抵抗がある」のような不安を抱えるのです。

LGBTの学生が困ること

LGBTの学生が困ること

では、学校での生きづらさにはどのようなものがあるのでしょうか。学生にとって、一日の大半を過ごす学校。

本来ならば一人一人が過ごしやすい環境が提供されるべきですが、現状不十分といえます。具体的に見ていきましょう。

トイレに行きづらい

毎日必ず利用するトイレですが、戸籍上の性別と自認する性が異なる当事者にとって利用しづらく感じるケースもあります。自認する性のトイレを利用したくても、カミングアウトをしていなかったり、周りの理解が不十分であることから、悩みを抱えることもあるのです。

トイレに行くことですら、人がいないときを見計らったり、我慢してしまったり。普段当たり前のように過ごしていることでも、LGBT当事者にとってはハードル高く感じてしまうことがあります。

宿泊学習でみんなとお風呂に入りづらい

トイレと同様、性別で区分された空間を利用することに抵抗感を抱く場合があります。

最近では、トランスジェンダーの生徒に対する配慮が行われてきていますが、そもそも先生に伝えることに勇気がいりますし、そこで理解されるかがわからない不安など、さまざまな感情が入り混じるのです。

性差のある制服やジャージに抵抗がある

ほとんどの場合、学校の制服は戸籍上の性別に基づき男女で分けられています。

男性はパンツやネクタイ、女性はスカートと、見た目だけでもかなり異なります。ですが、制服が気がかりで自分らしく学校で過ごせない人も多くいます。

最近では、制服が選べるような学校も増えてきています。

男女毎に髪型にルールがある

制服だけでなく、性別により髪型が決められている学校もあります。

男子生徒の長髪NG、女子生徒は髪を結ぶなど、髪型に関する性差は存在します。結果、自分らしさを押し殺した過ごし方を強いられることもあるのです。

プール授業などで着替えがしづらい

修学旅行でのお風呂のときと同様、プールの授業で更衣室を使うことに抵抗感を覚える当事者の人は多くいます。

また、男女混合のプールの授業で、性別によって分けられた水着を着ることを苦痛に感じる人もいます。そこに関しては、まだまだ配慮ができていない学校が多いように感じます。

個々が居心地よくいられる選択肢を柔軟に増やすことが、課題として挙げられるでしょう。

同級生などに理解を得られずイジメられてしまった

ReBitの調査によると、学校でいじめや暴力を受けたことのあるLGBTの学生は68%にも及ぶという結果が出ています。

半分以上もの当事者が自分のセクシュアリティやジェンダーにより、不都合な経験を強いられるのです。少しでも割合を減らすために、生徒だけでなく働く教員に対しての教育も必要です。

思春期の体の変化

性別違和をもつ人の58%が自殺願望もち、28%が自傷や自殺未遂を経験したという統計結果が出ています。

体の変化による違和感があり、さらに学校から性別によって制服や更衣室などを強制させられたという経験から、居心地悪く感じてしまったり、最悪の場合、詩を考えることもあるのです。

そのため、学校にいる生徒や教員の認識がアップデートされることが求められます。

性に関する授業でLGBTが適切に扱われない

最近では、保険の授業でLGBTにまつわる教育が行われていますが、適切とはいえないような表現や言葉が使われることもあるそうです。

慎重に情報を扱っているとはいえ、実際に当事者が何を言われたら傷つくのか、どのような配慮がされるべきなのかなど、認識が行き渡っていない可能性が考えられます。

当事者による教員への教育も今後必要となるでしょう。

LGBTが制度や福利厚生で困ること

LGBTが制度や福利厚生で困ること

一人一人の認識が徐々にアップデートされていても、効力の高い制度やシステムが備わらないと、どうしても障壁にぶち当たってしまう状況があります。

実際に、LGBT当事者が福利厚生において困難に感じていることとは、どのようなものでしょうか。

望む性で働く為の支援や制度がない

一つ目は、自認する性で制度が使えないという点が挙げられます。個人情報や書類の記入など、さまざまなシーンで性別を選択する場面が出てきます。

戸籍上の性別に丸をつけることに抵抗感をもつ当事者がいることを忘れてはなりません。さらに、ノンバイナリーやXジェンダーなど、男女のどちらかのみに当てはまらないジェンダーを自認する人も存在します。

一度立ち止まり、そもそも性別欄が本当に必要なのかについても考える必要があります。

配偶者に対する福利厚生が同性パートナーに適応されにくい

同性のパートナーをパートナーとして認められない点が問題視されてきています。パートナーが同性であることから公営住宅への入居が認められなかったり、親族の結婚や葬式に際して休暇が取れる慶弔休暇が得られなかったりと、さまざまな面で異性カップルと同等の権利が与えられません。

最近では、パートナーシップ制度を導入している企業が増えてきています。国として制度が認められなくても、会社から徐々に認識が広まっていくことで、国や社会を動かすきっかけになります。

賃貸の2人入居可物件を同性カップルは借りることが難しい

同性カップルは大半がルームシェアの扱いとなってしまうため、2人入居可の物件を借りることが困難な現状があります。「2人入居可」という表記は、基本的に結婚前提のカップルを想定している場合が多く、同性間の婚姻制度が認められていない日本においては、同性カップルは排除されやすい対象となります。

さらに、不動産屋さんに関係性を伝えることで、理由なしに断られたというケースもあります。同性同士での入居を考えている方は、IRISのようなLGBT当事者を対象とした不動産会社に相談するのもいいでしょう。

遺産相続問題

異性カップルの場合、どちらかが亡くなったとき常に相続できるのは配偶者となります。しかし、日本では法律上同性同士で結婚することが認められていないため、パートナーシップ制度を宣誓していたとしても、同性のパートナーに相続できません。

パートナーに相続したい場合、遺言などを利用して示しておく必要があるのです。

ペアローンが組みづらい

ペアローンとは、1つの物件に対して2人が別々のローンを組み、両者が連帯保証人になる方法をいいます。ですが、同性カップルは法律上カップルとして認められないため、ペアローンが組みづらいどころか、入居先すらも見つからない現状があります。

LGBTカップルの住宅ローンで必要な書類を用意すれば、ペアローンを認める金融機関もあるので、事前に確認が必要です。

日本のLGBTを取り巻く環境!LGBTの困ることのまとめ

日本のLGBTを取り巻く環境!LGBTの困ることのまとめ

LGBT当事者にとって、学校や職場など、日々の生活で困難だと感じる瞬間が多くあります。本来与えられるべき制度が適用されなかったり、理不尽な経験を目の当たりにすることも……。

記事内だけでも多くの問題が挙げられましたが、それ以外にも考えるべきことはたくさんあります。多くの人が他人事として捉えているかもしれませんが、LGBTは意外と多くいます。「もし、自分の大事な友人や親族がLGBTでさまざまな障壁にぶち当たっていたら……?」と考えると、考え方が変わる人が増えてくるのかもしれません。

誰もが過ごしやすい社会にするために、会社や国、周りの人ができることとは何か、一緒になって考えられるときが来ることを願います。