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男なの?女なの?トランスジェンダーのつらい就活事情

トランスジェンダー

多くの当事者が悩むであろう、トランスジェンダーの就活事情。

就活時の服装、メイク、履歴書、カミングアウトなど、さまざまなシーンでハードルを感じているのではないでしょうか。第一関門である就活を通過しても、次に待ち構えているのは就職。

いずれ職場でカミングアウトをするなら、就活の面接時でジェンダーを伝えるべきか。もしくは、落ちるかもしれない会社で、就活時にカミングアウトをするのは早いのか。

会社のこと以外でも悩むことが多いですよね。そんな難易度の高い就活をトランスジェンダー当事者はどのように乗り越えるべきか。

当事者の実際の経験を紹介します。この記事を読んで、少しでも解決策に導けられたら嬉しいです。

初めに
IRISでは、すべてのセクシュアリティやジェンダー、人種、国籍、民族、職業、家族構成の人々が自分らしく生きられる社会を実現したいという思いを込めて「LGBTs」と表現しています。

トランスジェンダーの難易度の高い就活

トランスジェンダーの難易度の高い就活

トランスジェンダーの就活において、さまざまな懸念点が浮かび上がります。裏を返せば、これらの問題点が解決されれば、少しだけでも楽になる可能性も……。

もちろん、トランスジェンダー当事者への配慮がない社会、そのような状況にしてしまった過去の積み重ねが問題視されるべきです。ですが、すぐに社会や法律、環境を変えることは難しいのが現実……。

トランスジェンダー当事者が、少しでも快適だと思える選択肢が尊重されることを願い、紹介する各問題点に対する対処法も紹介しています。

性別欄に嫌気がさす

まず、就活をするにあたって準備しなければならないのが履歴書です。従来の履歴書の性別欄には「男・女」と記載されており、どちらかに◯をつけるようになっていました。

しかし、2020年にNPO法人による署名活動を受け、従来の履歴書の様式例は削除されました。新たに提示された様式例には、性別欄が空欄となっており、そこに性別を記載するか否かは任意とされています。

さまざまなメーカーが、新様式の履歴書を販売する動きも見られ、当事者のなかでも大きな一歩であるとの声が寄せられていました。(厚生労働省のホームページから、新たな履歴書の様式例を拝見できます)

ですが、なかには「性別欄自体必要であるか?」「性別を書かないと逆に察されてしまうかも」といった声も上がっており、あるトランスジェンダー当事者団体では、廃止を望む活動を実施しています。

また、履歴書を不必要としたり、性別欄自体がないエントリーシートを配布する企業も多く出てきています。さまざまな考えがありますが、そのなかで最優先すべきは「自分が安心できる選択」です。以下では、履歴書におけるいくつかの選択肢をご紹介します。

▶自認する性別を記載する

セクシュアリティについて問われることを前提に、面接時にあらかじめ伝えておく当事者は多くいます。ですが、面接時や入社後に問われる可能性があることも頭に入れておきましょう。

また、Xジェンダーは、FtM、MtFよりも認知が低いと考えられるため、説明する場合が考えられます。

▶性別欄を空欄にする

国により性別欄の記入は任意とされていて、空欄にしておくことで問題になることや怪しまれる可能性は低いかもしれません。ですが、今後必要な書類や手続きで性別を記載する場面が出てくることも。

「会社にカミングアウトする」「タイミングを見てカミングアウトを決める」など、そのときどうするかを考えておくといいかもしれません。

▶一旦、空欄にしておく

カミングアウトするかどうかを決めていない人におすすめ。

面接時にダイバーシティ関連の取り組みや、LGBTsにまつわる福利厚生などを聞き、会社や面接時の雰囲気から判断できる点がメリットです。

▶戸籍上の性別を記載する

戸籍上の性別を記載することで、性別について聞いてくる人はいないと考えられます。しかし、その後何度か会社とのやり取りを重ねることで、居心地が悪くなってしまう可能性も考えられます。

▶履歴書を埋める前に、メールで伝えておく

面接に進むまでに企業側、主に採用担当者の方とメールでやり取りすることがほとんどなので、先にジェンダーについて伝えておくのもいいかもしれません。

ジェンダーについて問われてばかりで、なかなか会社のことが聞けなかったり、スキルを発揮できなかった当事者の方もいます。面接時でのカミングアウトを考えている方は、事前に伝えることも検討してみてはいかがでしょうか。

自動的にカミングアウトになってしまう可能性も

履歴書の性別欄の記載が任意になったり、企業側の考え方が変わってくることも増えてきましたが、いまだに性別の記載を強要する企業もあるようです。

例えば、企業指定のエントリーシートや履歴書など、どうしても自分で提出する書類の仕様を選べないことはあるかもしれません。そうなった場合、「戸籍上の性別を記載する」もしくは「自認する性別を記載する」のどちらかになると考えられます。

さまざまな当事者の経験を聞くなかで、自認する性別を記載した人はごくわずかであることがわかりました。

特にホルモン治療を受けている人で、面接官に性別を問われたというケースを多く見受けられます。自分のタイミングで伝えられないことは、かなりのストレスになることは想像できます。

そのような事態を避けるため、事前に企業の雰囲気やLGBTsへの取り組みなどをリサーチしておくのもいいでしょう。

理解を得られるか分からない恐怖

「カミングアウトしたいのに、会社の人に伝えるのが怖い」と思う人は多くいるはずです。その大きな理由として、相手が理解してくれるか、受け入れてくれるかがわからないことが挙げられます。

一か八かと考えながらカミングアウトすることはリスクですし、不安が募る一方……。ですが、入社後に伝えないまま過ごす方がもっとつらいと考え、就活時でのカミングアウトを果たした当事者の方もいます。

就活時にカミングアウトをした当事者のなかで、会社選びの判断材料にするという意見が印象的でした。

一見、就活は「会社が就活生を見る」と認識されがちですが、「就活生が今後働く会社の見定めをする」場所でもあるのです。仮にカミングアウトをして不快な反応が返ってきたとしても、今後選考に進むべきかが見えてくるはずですし、その会社に入社してから同じようなことが起きるかもしれないと考えられます。

さらに、そのカミングアウトがきっかけで、その会社での環境づくりの改善や、当事者の声を会社に反映させる機会が増えたという意見も最近では聞きます。

就職できたとしても消えない不安

なんとか就活が終わったとしても、不安は募るものです。今後、どのように会社と接していけばいいのかと思い悩む人も多いでしょう。

本来、そのような不安を取り除くのが会社の仕事であるべきなのですが、そういった環境が備わっていないことから、その分当事者へのストレスがかかってしまいます。

そんな不安を解消させるため、就活でOB訪問を活用し、実際にその会社で働いていた社会人の方に話を聞いてみるのもいいかもしれません。

あくまで会う人はOBであり、現在その会社に働いている人ではないため、割とリアルな内部事情を入手できる点がメリットです。

そこで得た状況から、実際に会社で働いている自分を想像しやすくなりますし、カミングアウトすべきか否かなどの判断もつきやすくなります。

着たくもないスーツ

就活時の服装に悩むトランスジェンダーの方はたくさんいることでしょう。特にスーツは普段着よりも自由度が限られ、性別による特徴がはっきりとしています。

女性用スーツは、タイトなデザインで作られていることが多く、ヒールを履くことが通常とされています。男性は、ネクタイにパンツスタイルが主流とされています。

しかしながら、個人の性表現は千差万別であり、一つのスタイルに集約させることの方が難しいように感じます。自分を見せる就活の場で、自分らしさが損なわれてしまっては意味がありません。

さまざまな就活の服装に関する悩みはありますが、結論から言うと自分の好きなスーツを着てもOK!という企業も増えてきているそうです。

その理由は、企業はあなた自身のことを見たいからです。数多くの企業があるなかで選んだ企業が魅力的であるように、あなたも他の人と違うことは当たり前ですし、企業もその違いを見たいと思っているのだと思います。

仮に、服装を見て嫌な顔をされたとしましょう。入社後もスーツやオフィスカジュアルを着る機会はあるはずです。週の大半を過ごす職場で居心地よくいられなかったり、それにより自分のスキルを発揮できなかったら、会社にとっても自分にとっても不利益となります。

両者ともに“らしさ”を尊重してくれる会社で働くことが本当の幸せに繋がるのではないでしょうか。

嘘の自分のまま生きていかなければならないのか

上にも繋がる話ですが、入社後の自分のあり方を想像する当事者は多いはずです。入社後、トランスジェンダーであることを隠し通すのか、好きな服装を我慢しなければならないのか、居心地の悪い呼び方をされるのか。入社までの間、不安を抱えながら過ごすことでしょう。

さまざまな企業で「自分らしく働く」がキーワードとなっていますが、それを実現させるには企業側のLGBTsに関する取り組みがマストとなります。会社に当事者の声を届けることは、自分らしく働くための第一歩になります。

とはいえ、会社に伝えることに抵抗感をもつ人もいるはずです。その場合、入社後に理解のある社員さんや仲良くなった社員さんに相談してみるのもいいかもしれません。

自分が居心地悪くなる状況は避けた上で、匿名で会社に伝えてもらうなどしてもらいましょう。なかなか人に頼ることは難しいかもしれませんが、一歩踏み出すことで状況が変わったという事例もたくさんあります。

本当の意味でLGBTsフレンドリーな企業は少ない

本当の意味でLGBTsフレンドリーな企業は少ない

最近では「LGBTs」という言葉が世の中で聞くようになり、LGBTsの取り組みをする企業も増えてきました。ですが、残念ながら、なかには「LGBTsフレンドリー」と名乗るだけの企業も存在します。

そのため、本当にLGBTsフレンドリーな企業かを見分けることが大事です。企業におけるLGBTsの認知や考え方は一体どのようなものでしょうか。一緒に見ていきましょう。

レズビアンやゲイの理解は広がっていても、トランスジェンダーについては……

多数の自治体でパートナーシップ制度が導入されるという動きが見られ、昔と比べると、ゲイやレズビアンといった同性愛者への理解が追いついてきたように感じます。

同性パートナーと子を「家族」として扱うファミリーシップ制度や、パートナーシップ制度を宣誓しているカップルを対象に公営住宅への入居を認めるなど、取り組みを導入している会社が増えてきました。

ですが、LGBTsの取り組みは、同性愛者はもちろん、トランスジェンダーへの配慮も必要です。例えば、トイレのような性別で区分されやすい空間、書類等の性別欄、宿泊を伴う研修での部屋割りやお風呂。

トランスジェンダー当事者が直面する問題への対応策が備わっている会社は少なく感じます。徐々に働きやすさを重視するようにはなったものの、さまざまなマイノリティに向けた配慮が必要なのです。

偏見のような理解が広まってこともある

「アンコンシャス・バイアス」という言葉があるように、無意識の偏見が存在します。何十年も生きてきたなかで身に付いた認識なので、無意識の偏見が全くない人はいないでしょう。

よくあるのが「手術を受けた人のみをトランスジェンダーという」「トランスジェンダーは精神病である」などの誤った認識です。本人は傷つけるつもりでなくても、当事者にとっては不快に思うこともあります。

無意識の偏見は多く存在していても、なるべくなくすことはできます。自分がマジョリティであることで、想像しないようなマイノリティ当事者がもつ問題や考えが存在します。

無知を既知に変えるには、さまざまな情報に目を向けること。そして自分で調べることです。会社でのダイバーシティ研修もその一つ。

研修で得た情報を実際に調べて知ることで、自分以外の人たちを存在しているものとして認識できます。そこから派生して、接し方や言葉選びなどを意識するようになれば、当事者が過ごしやすい環境づくりに直接的に貢献できます。

トランスジェンダーが自分らしく働く為には

トランスジェンダーが自分らしく働く為には

トランスジェンダー当事者の就活、就職では、さまざまな問題点や改善点が多く見られます。最終的には、トランスジェンダーが自分らしく働けることが目標です。

会社側が当事者の過ごしやすい環境をつくることが求められます。なるべく、そのような取り組みを行っている会社と出会うために、当事者が心がけることとはなんでしょうか。

PRIDE指数を参考にする

「PRIDE指数」とは、任意団体「work with Pride」が出した、日本初の職場におけるLGBTsなどのセクシュアルマイノリティへの取り組みの評価指標を指します。

※評価項目としては、「会社としてLGBTQ等の性的マイノリティに関する方針を明文化し、インターネット等で社内外に広く公開している」「社内のコミュニティ(LGBTQAネットワーク等)がある」「採用方針として学生等に伝えている」などがあり、加算式で評価されます。

就活中の方は、参考として活用してみてはいかがでしょうか。

※参考:Work with Pride

Job Rainbowを活用してみる

Job Rainbowは、LGBTs当事者の就活、就職を応援するLGBTs求人サイトです。ホームページより、各企業のダイバーシティスコアを見ることができ、LGBTsに関する取り組み、企業としての考え、社員のクチコミなどが掲載されています。

実際に、多くのLGBTs当事者がJob Rainbowを使って会社に入社、その後自分らしく働いているとの声を聞きます。無数の企業が存在するなか、このようなサイトを活用して自分に合う会社を絞るのもいいかもしれません。

フリーランスで生きていくという選択肢

会社で働くということは、人と働くことになります。会社でLGBTsの取り組みが行われていても、働く人に偏見があれば居づらさを感じてしまうのも当然です。

このようなトラブルを避けるため、フリーランスとして生きていくことを選択する当事者の人も多くいます。とはいえ、月々固定で給料は支払われないことが多いことや、自分から仕事を獲得しなければならないこともあるため、粘り強さが必要となります。

今一度、自分の仕事スタイルを再認識した上で、フリーランスを検討してみるのもよいでしょう。

【まとめ】トランスジェンダーも自分らしく働けるへ

【まとめ】トランスジェンダーも自分らしく働けるへ

今回は、トランスジェンダーの就活についてご紹介しました。今就活中の方、これから就職する方など、不安やワクワクといった感情が入り混じっているのではないでしょうか。

自分が一番安心できる決断とは何か。このことを考えながら、今度の就活、就職に活かしてみてください!

誰もが自分らしく生きられる社会が来ますように。

この記事を書いたのは

Honoka Yamasaki

ライター、ダンサー、purple millennium運営。 Instagram:@honoka_yamasaki

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