性自認に悩む人は少なくないはずです。最近では、男女の2つだけでなく、その枠に当てはまらない性別もあります。男女のどちらにも当てはまらない、Xジェンダーという言葉も浸透してきていますが、それでも社会では性別で区別されることが多く、どこかのカテゴリーに属さなければならないという無言の圧力があるように感じます。

そういった圧力のなかで「Xジェンダーかもしれないけど、思い込みの可能性も…」と思う人も一定数いるはずです。しかし、今すぐに性自認を明確にする必要はありません。そもそも性自認は決めるものでも、焦って探し求めるものでもありません。実際、Xジェンダーを自認していたが、思い込みだったというケースも少なくはないのです。性のあり方というのは、多種多様です。カテゴライズできる言葉がある場合とない場合があり、必ずしも決めなければいけないものではありません。

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Xジェンダーとは何か

Xジェンダーとは、簡単にいうと「男女のどちらにも当てはまらないセクシュアリティ」のことをいいます。Xジェンダーのあり方は無数ではありますが、以下の5つに分けられることが多いです。

①中性

名前の通り、男女の中間に位置する性自認。

②両性

女性、男性の両性を自認する性自認。例えば「女性1割、男性9割」のように、両性が混ざり合っている状態であり、人によって性別の割合が異なります。

③無性

女性でも男性でもない性自認。無性を自認する多くの人が、男女の概念をもっていません。

④不定性

その瞬間によって性別が流動する性自認。男女だけでなく、上で紹介した中性、両性、無性など、さまざまな性の間を行き来することもあります。

⑤その他

Xジェンダーについて、①~④をあげられることが多いですが、それ以外のあり方があることも頭に入れておきましょう。「女性、不定性、無性」のように3つの性で構成されている人、「女性、無性」と2つの性を自認する人、性別を定義しない人など、個々によって認識は異なります。

Xジェンダーは病気ではない

この記事を読む人のなかには、「FtX」「MtX」のような言葉を目にしたことがある人もいるかもしれません。それらに共通している「t」は「to(~から)」を意味します。つまり、FtX(Female to Xgender)は、出生時に割り当てられた性別が女性で性自認がXジェンダー、MtX(Male to Xgender)は、出生時に割り当てられた性別が男性で性自認がXジェンダーのことをいいます。

2018年にWHO(世界保健機関)で、性同一性障害が精神疾患から除外されたことが話題となりました。ですが、いまだに世の中では出生時に割り当てられた性別と、性自認が一致していることが正常だとされ、それらが一致しないトランスジェンダーを精神障害と認識する風潮はあるように感じます。手術を受けないと法的に自分の望む性別に変えられないなど、Xジェンダーに関してはまだまだ理解が不十分な現実もあります。全ての人が、同等の権利を得られる時代を実現するには、まず従来の性のあり方だけではないということを知ることが求められるでしょう。

Xジェンダーに関する思い込み

Xジェンダーかもしれないと思う人のなかには、思い込みであることを恐れている人も多くいます。原因として、経験や環境、さまざまなことが考えられます。

性別に対する違和感

我々は学生時代から体育の授業や名簿、制服など、さまざまなシーンで男女で区別されてきました。思春期を迎える大事な時期で、このような性別による区別に対して違和感を抱く人も少なくなかったはずです。服装や遊びに関しても、女の子らしさや男の子らしさを押し付けられ、自分が好きな選択をしたくてもできずに我慢を強いられることは多いのです。

ですが、シスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致している人)の人でも、女の子で髪の毛が短く、スポーティーな格好を好む人はいますし、男の子でままごとをして遊ぶ人もいます。個人の好みが必ずしも性自認と関わるかといえば、100%とはいえないでしょう。なので、「性別への違和感」が「トランスジェンダーである」と絶対的になるわけではありません。

同性のグループに馴染めない

学校や職場で、自然と同性同士のグループができることはよくあることです。ですが、そこに馴染めないという人もいるはずです。それには、先述したように、いわゆる世間から求められる女性、男性像に当てはまらない人、同性に共通の趣味をもつ人がいなかったりなど、さまざまな要因が考えられます。

たしかに、同性同士でいる集団帰属意識も高いように感じます。また、世の中では、男女で分ける風潮があり、それが当たり前とされてきました。しかし、その枠に入らないことで、本人ではなく周りが性別を認識することがあります。ですが、まずは本人がどう感じるかが優先されるべきです。周りの判断により、本人の性自認を揺るがすことがあってはなりません。

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思い込みだと思っても、焦る必要はない

性のあり方というのは実に多様です。多様性という言葉はポジティブな文脈で使われることが多いですが、多様がゆえに苦しいこともあります。

例えば、性のあり方を指すときにあげられる4つの構成要素「①出生時に割り当てられた性 ②性自認 ③性的指向 ④性表現」がありますが、それらどれか一つでも世間でいう少数派に属することで、珍しいとされることもあります。男性がメイクをしていたり、同性が恋愛対象であることなど、少数派もポジティブとされる多様性に含まれるのに、差別や偏見の的にされてしまうこともあります。

「異性を好きになるのが当たり前」「女らしく、男らしくいなければならない」「出生時に割り当てられた性別と性自認が一致するのが正常」などの社会通念が存在しますが、その「ごく狭い枠に全ての人が収まる」と考えるのには無理があるように感じます。地球に存在する何十億人もの人が、同じ考えをもつわけではありませんし、違う考え方をもつものとして認識することが大事なのではないでしょうか。

個体として認識する

「Xジェンダーかもと、不確かだけれども感じる」としても、焦る必要はありません。「自分とは何か」について考えるとき、意外にも一番わかっているはずの本人が、答えを導き出せないこともたくさんあります。また、性自認だけではなくセクシュアリティやリレーションシップにおいても、数えきれないほどのあり方があるからなのです。

性のあり方はグラデーションといわれ、「カテゴライズできるかできないか」で良し悪しを判断するのは意味がないように感じます。なぜならば、時間の流れとともに、今までの既存の概念が拡大されるようになったり、それにより新たな言葉が誕生したりすることもあり、今はただ、カテゴライズできる言葉ができていない場合もあるからです。

たとえば、「Xジェンダー」という言葉は、実は和製英語であり、完璧に意味を表すことができるような単語は英語にはありません。もし、自分が英語圏でしか育っていないのならば、きっとXジェンダーという言葉も概念も知らなかったでしょう。「カテゴライズできないから異常だ」と捉えるのではなく、言葉で表現できるあり方も、表現できないあり方も、それぞれを個体として認識することが大切です。