今回の記事では、トランス男性(FtM)のエッセイ・自叙伝をまとめました。
トランス男性とはLGBTの「T(トランスジェンダー)」に該当し、FtM(Female to Male)ともいいます。生まれたときに女性として性別を割り当てられたがジェンダー・アイデンティティが男性である人、または男性として生きていく人を指します。
トランスジェンダー男性の想いを伝えるエッセイ
虎井まさ衛さんの著書『女から男になったワタシ』(1996年, 青弓社)をはじめとして、2000年以降はFtMの本がいくつか登場しました。
スカートをはいた少年-こうして私は僕になった
2002年 ブックマン社
競艇(モーターボート)選手時代に女性から男性の選手へと登録変更&カミングアウトした安藤大将さんの書。当時、メディアで話題になりました。
男の戸籍をください
2003年 毎日新聞社
性同一性障害(当時の名称)を世に広めた『3年B組金八先生 第6シリーズ』直役(上戸彩さん)のモデルといえばご存知でしょうか、虎井まさ衛さんの著書です。
戸籍上の性別を変更するための性同一性障害特例法は、2004年に施行されました。逆にいうと、それまではどれほど性別違和があろうが手術をして身体的な変化を遂げようが、戸籍は出生時から変更できなかったわけです。タイトル通り、戸籍変更を勝ち取るまでのトランスジェンダーの闘いの物語となっております。
性別不問。――「性同一性障害」という人生
2003年 成甲書房
ポジティブな男、岩村匠さんによる著書。性同一性障害(2022年現在では「性別違和」や「性別不合」と呼ぶようになりました)やトランスジェンダーという用語もない頃、女性が好きだから同性愛者なのか?とまず思ったそう。これはFtMによくある感覚かもしれません。
岩村さんは自身が男性であると自認していながらも、女子短大へ行くことになります。お金がないことと、親が「女の子が大学に行くなんて就職できなくなる」という価値観をもっていたためです。
本の中では、「よくある質問」への回答も含まれています。
女に生まれて男で生きて――女子サッカー元日本代表エースストライカーと性同一性障害
2006年 河出書房新社
著者は女子サッカー元日本代表である水間百合子さん。1970年生まれであり、小中学生の頃に流行していた『キャプテン翼』の影響もあってサッカーに興味を抱いたといいます。サッカー選手としての活躍を終えた後、2006年に性同一性障害だと公表しました。
あなたが「僕」を知ったとき 性同一性障害、知られざる治療の真実
2009年 文芸社
著者の前田健裕さんは500万円以上をかけ、ペニス形成までの手術を体験しました。自分の体のことですから、一口にペニス形成といっても、どんな術式にするか悩みに悩みました。男性だらけの職場でトランスジェンダーの男性だと認知されながら働くことの厳しさも述べられています。
女から男になりました。――性同一性障害と闘った24年間
2009年 文芸社
表紙は上裸で身構える一人の男性の姿。稜平さんが戸籍の上でも男性としての人生を勝ち取るまでの記録です。
ぼく、長女です。
2010年 ワニブックス
初の「イケメンおなべタレント」としてデビューした諭吉さん。過去の話を綴っているのですが、自然にすっと読みやすい一冊です。
出版より後の話ですが、諭吉さんは2012年から2018年にかけてはSECRET GUYZ(シークレットガイズ)というFtM3人組アイドルグループでの音楽活動もしていました。
オレは絶対にワタシじゃない: トランスジェンダー逆襲の記
2018年 はるか書房
「人は悲しみなしに、人権活動家になんてならない」
トランスジェンダー当事者としてLGBT支援にかかわる、遠藤まめたさんの著書。
性的少数者であることは、生きづらさと切実に繋がっています。ときに友人を失うことも。
遠藤さんは、LGBTの子ども・若者向けに「にじーず」という団体を運営しています。
虹色ジャーニー 女と男と、時々ハーフ
2019年 文芸社
トランスジェンダー当事者への様々な活動をおこなう、看護師の浅沼智也さん。半生を振り返れば、風俗にのめり込んだり、自殺未遂したり。決して穏やかな道のりではありませんでした。
現在は「カラフル@はーと」という、LGBTQ当事者で精神疾患、発達障害、依存症(アルコール・薬物・性行動、他)などの問題を抱える方のための、自助グループでの活動をしています。2021年11月20日『トランスジェンダー追悼の日』に新宿で実施された『Tokyo Trans March 2021』(トランスマーチ)では畑野とまとさんと共に共同代表を務めました。
無性愛
2021年 ワニブックス
俳優として活躍中である中山咲月さんのフォトエッセイ。自身がトランス男性であり、無性愛者(アセクシュアル)であると告白しました。「ジェンダーレス」と形容されることが多かった中山さんが、中性的という言葉ではなく男性なのだと初めて告げます。
また、無性愛者だということで、ジェンダーを語るときにセットで浮上しやすい話題「付き合っているの?」「恋愛しないの?」というような恋愛の規範にも疑問を呈します。
ゼロへ そこから先がオレの人生
2022年 ぶなのもり
元毎日新聞記者である鴇沢哲雄(ときざわてつお)さんが、あるトランス男性を取材した一冊。写真の撮り下ろしも楽しみです。