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「SOGIハラ」という言葉をご存じでしょうか。セクハラ、パワハラ、モラハラなど、さまざまなハラスメントが社会問題として認識される中、近年注目されているのがこの「SOGIハラ」です。

性的指向や性自認に関する差別や嫌がらせを指すこの問題は、表面化しにくいながらも、多くの人の心を深く傷つけています。

本記事では、SOGIハラの基本概念から具体的な事例、法的な対応、そして私たち一人ひとりができる対策まで徹底解説します。

SOGIハラの基本:定義から理解する性的指向と性自認に関するハラスメント

最近では「LGBTQ」という言葉が社会に浸透しつつありますが、日本社会においてセクシュアルマイノリティが生きやすい環境が十分に整っているとは言いがたい現状があります。厚生労働省の調査によると、日本におけるLGBTなどのセクシュアルマイノリティの人口比率は約11人に1人で、左利きの人と同程度の割合です。職場で困りごとを抱える当事者の割合は、LGB(同性愛者や両性愛者)が36.4%、T(トランスジェンダー)が54.5%と高い数値を示しています。

SOGIハラとは、「Sexual Orientation and Gender Identity(性的指向および性自認)」の略称である「SOGI」と「ハラスメント」を組み合わせた言葉です。性的指向や性自認に関する差別的言動や嫌がらせ、侮蔑などを指します。日本社会では異性愛者が多数派であるため、「彼氏いるの?」と女性に尋ねるなど、異性愛を前提とした会話が日常的に行われています。

SOGIの概念と全ての人に関わる多様性

SOGIは特定の人だけでなく、すべての人に関わる概念です。SOGIとは、好きになる性別(性的指向)と自分の性別をどう認識しているか(性自認)を表す言葉で、LGBTsだけでなく異性愛者(ヘテロセクシュアル)も含めたすべての人が持つ属性です。

例えば、性自認が男性で恋愛対象が女性である人、性自認が男女のいずれにも当てはまらないノンバイナリーで恋愛対象が男性である人など、人々のSOGIは多様です。「異性愛が当然である」という前提のもと、「LGBTsは特殊、異常」という認識や偏見を持つことで、当事者を無意識に傷つけてしまう可能性があります。

SOGIを理解することは、多様な性のあり方を尊重し、誰もが自分らしく生きられる社会を作るための第一歩となります。SOGIハラの防止は、職場や学校、地域社会などさまざまな場面で重要な課題となっています。

知らぬ間に傷つけている?SOGIハラの具体的事例と影響

異性愛が前提となる社会では、無意識のうちにセクシュアルマイノリティに対してプレッシャーを与えたり、傷つけたりしてしまう可能性があります。「なくそう!SOGIハラ」によると、SOGIハラには主に5種類あります。それぞれの具体例を見ていきましょう。

1.差別的な言動や呼称によるSOGIハラ

「あの子レズだよね」「あの人ってそっち系らしいよ」といった言葉は差別的な言動に該当します。日本では「ホモ」という言葉が男性同性愛者を軽蔑する言葉として使用されてきた歴史があり、「レズ」や「そっち系」なども差別用語として認識されています。

当事者間では「ホモ」や「レズ」と呼び合うこともありますが、これは信頼関係があり、互いが不快に思わないことを前提として使われる言葉です。言葉だけを禁止するのではなく、言葉を使う背景や歴史、適切でない場面を理解することが重要です。相手の気持ちを考慮せずに使用することは、相手を深く傷つける可能性があります。

2.いじめや暴力、無視につながるSOGIハラ

セクシュアルマイノリティであることを理由に、学校でいじめや暴力、無視を経験する当事者は多く存在します。「あいつゲイで狙われるかもしれないから、無視しようぜ」といった言動は、「ゲイは男性であれば誰でも恋愛対象になる」という誤った認識に基づいています。

このような言動は当事者の許可なくセクシュアリティを公言する「アウティング」にもつながります。勇気を出してカミングアウトしても、結果的に周囲から不快な言動をされる状況は非常に悲しいことです。学校での教育やセクシュアリティによって制限されない制度の構築、LGBTsに配慮した環境づくりが求められています。

3.望まない性別での生活強要によるSOGIハラ

社会では戸籍上の性別に従ってさまざまな制度が適用されることがほとんどです。例えば学校では、性自認が女性ではない場合でも戸籍上の性別が女性であればスカートを着用することが強いられるケースがあります。このような状況は、毎日精神的な苦痛を感じながら学校生活を送ることを意味します。

最近では「制服選択制(制服のスタイルを生徒が選べる制度)」を導入する学校が増えており、トランスジェンダーを含むさまざまなマイノリティへの配慮がなされるようになってきました。しかし、カミングアウトしづらい環境や、自認する性のスペースを使用できない状況など、解決すべき課題は多く残されています。

4.不当な扱いにつながるSOGIハラ

過去にトランスジェンダーであることを理由に解雇された従業員のニュースが報道されたことがあります。「男性だからメイクをするな」「女性はスカート、ヒールを履くこと」など、身体的な性別で判断し、本人の性自認を尊重しないことは差別に該当します。

当事者は、本来の自分を表現できないことで精神的苦痛を感じ、そのプレッシャーから自分を隠し続けることでカミングアウトができないという悪循環に陥ることがあります。職場や学校では、個人の性自認や性的指向を尊重する環境を整備することが重要です。

5.アウティングという深刻なSOGIハラ

「一橋大学アウティング事件」では、ゲイであることを自認していた男子学生が、友人によるアウティングを受け、自ら命を絶つという痛ましい出来事がありました。他人が本人の許可なくセクシュアリティや性自認を暴露する権利はありません。カミングアウトを受けても、その情報を他者に伝えてよいわけではありません。

当事者は慎重に相手やタイミングを考慮した上で、信頼できる人に対して自分のプライベートな情報を打ち明けています。アウティングは当事者の意思を無視した行為であり、当事者の生命に関わる深刻な問題となり得ます。SOGIハラの中でも特に重大な人権侵害として認識することが重要です。

6.ハラスメント防止のための法律と対策

日本では2020年6月に改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が施行され、企業にパワーハラスメント防止対策を講じることが義務付けられました。この法律ではパワーハラスメントの一種としてSOGIハラやアウティングも含まれており、LGBTsやSOGIに関する差別やハラスメントを防止する法的な枠組みが整備されました。

企業は従業員のプライバシー保護や相談対応体制の整備、ハラスメント防止に関する研修など多岐にわたる対策を講じる必要があります。中小企業においても2022年4月からパワハラ防止法の対象となっており、すべての企業が対応を求められています。

企業だけでなく、友人や家族間でもSOGIハラを受ける当事者は存在します。法律や制度の整備は社会の意識改革を促し、結果的に一人ひとりが考えるきっかけを生み出します。SOGIハラ防止には社会全体での取り組みが欠かせません。まずは正しい知識を身につけ、自分の言動を見直すことから始めましょう。

企業と個人ができるSOGIハラ対策

SOGIハラのない社会を実現するためには、企業と個人がそれぞれの立場で対策を講じることが重要です。具体的な対策を見ていきましょう。

1.企業が取り組むべきSOGIハラ防止策

企業がSOGIハラを防止するためには、まず明確な方針を打ち出すことが重要です。就業規則や行動規範にSOGIハラの禁止を明記し、全従業員に周知徹底することから始めましょう。経営層から現場のリーダーまで、意識改革を促進する姿勢を示すことが効果的です。

次に、従業員向けの研修プログラムを実施しましょう。SOGIの基本概念から始まり、無意識の偏見や差別的言動の事例、適切な対応方法などを学ぶ機会を設けることで、職場全体の理解が深まります。研修は一度きりではなく、定期的に実施することが望ましいでしょう。

相談窓口の設置も不可欠です。SOGIハラの被害を受けた従業員が安心して相談できる環境を整備し、相談を受けた際の対応フローを明確にしておくことで、問題の早期発見と適切な解決につながります。相談者のプライバシーを守り、二次被害を防止する体制づくりが重要です。

さらに、福利厚生制度の見直しも検討しましょう。同性パートナーを配偶者と同等に扱う制度の導入や、トランスジェンダーの従業員が性自認に合った服装で勤務できるよう配慮するなど、多様な従業員が働きやすい環境を整えることが企業の社会的責任として求められています。

2.個人レベルで実践できるSOGIハラ防止策

個人レベルでもSOGIハラを防止するために実践できることがあります。まず、SOGIに関する正しい知識を身につけることから始めましょう。書籍やインターネット、セミナーなどを通じて学び、偏見や差別的な考え方を見直す機会を持つことが大切です。

日常会話においても注意が必要です。「彼氏/彼女はいる?」という質問を「パートナーはいる?」と言い換えるなど、相手の性的指向を決めつけない表現を心がけましょう。冗談のつもりでも、相手を傷つける可能性のある発言は避けるべきです。

もしSOGIハラを目撃した場合は、勇気を持って声を上げることも重要です。直接的な介入が難しい場合でも、被害者に寄り添い、適切な相談窓口を紹介するなどのサポートができます。また、自分自身がSOGIハラの加害者にならないよう、常に自分の言動を振り返る姿勢も大切です。

SOGIハラ防止は特別なことではなく、お互いの人格を尊重するという当たり前のことから始まります。多様な性のあり方を認め、誰もが自分らしく生きられる社会を目指して、一人ひとりが意識を高めていくことが大切です。

まとめ:誰もが尊重される社会を目指して

SOGIハラは性的指向や性自認に関するハラスメントであり、当事者に深刻な影響を与える行為です。日本社会ではセクシュアルマイノリティが約11人に1人の割合で存在しており、SOGIハラは決して他人事ではありません。

SOGIハラには、差別的な言動や呼称、いじめや暴力、望まない性別での生活強要、不当な扱い、アウティングなどさまざまな形態があります。これらのハラスメントを防止するために法整備が進められ、パワハラ防止法ではSOGIハラも対象とされるようになりました。

企業では方針の明確化、研修の実施、相談窓口の設置、福利厚生制度の見直しなどの対策が求められています。個人レベルでも正しい知識を身につけ、差別的な言動を避け、SOGIハラを目撃した際には適切に対応することが大切です。

SOGIはすべての人に関わる概念であり、多様な性のあり方を尊重することは社会全体の課題です。誰もが自分らしく生きられる社会を実現するために、SOGIハラについての理解を深め、一人ひとりが行動していくことが重要です。相手の人格を尊重し、多様性を認め合う社会を目指して、今日からできることから始めていきましょう。