日本にはレズビアンやゲイ、クィアなど、セクシュアルマイノリティとよばれる人がたくさんいます。2019年のLGBT総合研究所が実施した「LGBT意識調査」によると、日本のセクシュアルマイノリティの割合は、10%という結果がでました(本記事でいう「セクシュアルマイノリティ」はシスジェンダーかつ異性愛者以外の人のことを指します)。

結果をみてピンとこない人もいるかもしれませんが、10%は左利きの人とほぼ同じ割合だといわれています。こんなにも多くのLGBTs当事者が日本に存在するにもかかわらず、同性同士の結婚が法的に認められていない現状もあり、将来、好きな人と一緒に過ごせるか不安に思う人がたくさんいます。

私のレズビアンの友人は「恋人が同性であることで嫌な思いをした。将来、一緒にいることで同じ気持ちを抱えてほしくない」「将来に対する重みが人一倍ちがう」と語っていました。そこで今回はレズビアンの将来について、レズビアン当事者の考えや自分自身の経験を交えながらお話します。

同性と付き合うことで不安に映る将来

私は同性の恋人ができるまで、自分のことをヘテロセクシュアル(異性愛者)だと思っていました。初めて女の子を好きになった高校生の夏。今思えば、何も特別な片想いはしていなかったはずですが、当時は今ほど「レズビアン」や「トランスジェンダー」などのLGBTsを示す言葉が浸透していなかったため、私がその女の子に向ける「好き」の感情が友達としてか恋愛としてなのか、わかりませんでした。テレビや学校でレズビアンのカップルを見たことはあったものの、いざ自分が当事者となったときは、受け入れがたく感じていたのかもしれません。

大学生になり、やはり女性に対する特別な感情を抱くことがありました。そして好きになった相手から告白され、最初は「彼女として満足させられるかわからないけど、それでもよければ付き合ってみよう」と伝え、交際がスタートしました。今までは「レズビアン」という概念がなかった私が、そのとき初めて女性同士の恋愛も、異性と変わらず特別ではないことを知りました。

それから恋人と一緒に過ごすうちに「付き合う相手が女性だから」という理由で、理不尽な現実を突きつけられることがあり、衝撃を受けたことを覚えています。それまでは異性の男性と付き合っていたので、異性愛が一般的だと考えられている日本では、不自由なく暮らすことができました。ですが、自分自身がマイノリティという位置に立つことで、異性同士の恋愛がいかに特権のもつものであるかを痛感されられました。そして今まで考えてこなかった「好きな人と過ごす将来」についても考えることが増えました。

レズビアンの将来は明るいのか?

レズビアンの将来は明るいのか?

最近街を歩いていると、レズビアンのカップルを見かけるようになり、同性愛が徐々に浸透してきたと思うと同時に、社会と触れ合うことで感じる不安も増えました。また、日本ではレズビアンに対するステレオタイプや偏見が多く存在します。そういった環境は差別を助長するだけでなく、マイノリティの人権が守られることからも遠ざけていくのです。

セクシュアルマイノリティの人権が保証されるような法律が制定されないことも、LGBTsが受け入れられない一つの要因だと考えられます。法律がないことで、好きな人と一緒に過ごす将来が明るく映らず、不安に感じてしまうことがあります。そこで、女性同士のカップルとして過ごすなかで感じた違和感や、レズビアンの抱える将来への不安について紹介します。

世間のもつレズビアン像に苦しむ当事者たち

インターネットが普及した現代では、たくさんの記事や広告を目にする機会が増えました。そんな情報過多社会で、嘘か本当かがはっきりしない情報が溢れ、真偽を自分で判断することもあるかもしれません。特にインターネット上では、偏ったレズビアンの描き方をしたコンテンツが多く存在するがゆえに、現実とフィクションを混在して考える人が多く存在するように感じます。

これは実際に起きた話なのですが、ある日、同性の恋人と夜手をつないで街を歩いていると、一人の男性が近づいてきました。彼はフレンドリーに近づいてきて挨拶をすると、「一緒に楽しいことをしない?」と私たちを誘ってきたのです。私はそのとき、意味を理解していなかったのですが、後ほど恋人から「あれは、3人でセックスしようという意味だよ」と聞き、身の毛が立ちました。

なぜカップルである私たちに非常識なことを言ってきたのか、考えるだけで苛立ちを覚えましたが、のちに調べてみると稀なケースではないことに気付きました。アダルトビデオや漫画で、フィクションとして描かれるレズビアン。「百合」という言葉が存在するように、美しい女性同士の恋愛やアダルトな描写が浸透している日本では、リアルなレズビアンを知らない人がたくさんいます。

すべてのレズビアンがプラトニックなラブを貫きたいわけではありませんし、女性が恋愛対象である当事者が男性とのセックスを楽しみたいと思うことは少ないのです。あの日、彼が3Pしたいと言ったことも、もしかしたらレズビアンをファンタジーとして消費していたからかもしれません。将来、同じことを繰り返さないためにも、目に見える広告やコンテンツから、正しい情報を発信することが求められるのではないでしょうか。

将来、いきなり突き放されてしまう可能性も

当時付き合っていた恋人は外国籍の人で、お互いの国を行き来する、いわゆる遠距離恋愛をしていました。当時、就職活動を終え相手が住む国の企業から内定をもらい、将来恋人と一緒に住む夢を抱えて一人胸を踊らせていたのも束の間。コロナウイルスが流行してから政府は外国人旅行客を規制することを取り決め、内定が保留になり恋人と会えなくなることに・・・。

国際カップルなら、コロナで離れ離れになるケースはよくあることです。しかし、私の友達も同じように外国籍の恋人がいるのですが、コロナを好機に捉え、将来一緒に住むために結婚したと報告してくれました。彼女は異性の恋人と付き合っていたので、もちろん彼女たちにとって結婚は合法。

喜ぶべき話ではあったものの、複雑な気持ちを抱えてしまいました。日本も相手の国も同性婚は認められず、レズビアンに関するステレオタイプも存在しています。そんな地でレズビアンカップルが一緒に過ごす術は、どちらかの地で会社に入り、労働ビザを手に入れることのみでした。

私がそこで感じたのは、異性愛の特権です。これがレズビアンカップルのような同性愛者だと、同じような扱いが認められないということ。同じ人間が2人並んだとき、片方が性別によって違う扱いを受け、将来の道が狭まれる状況に置かれることが、今の社会の現状なのです。コロナで恋人とは突き放され、お互いの精神状態も関係性もうまくはいかず、結局さようならをすることとなりました。

レズビアンの明るい将来を願って

レズビアンの明るい将来を願って

レズビアンカップルとして過ごすなかで、社会的に理不尽な出来事に衝突するだけでなく、自分たちの将来ですらも選択できないことを実感しました。

今回話したこと以外にも、将来に不安を抱えるレズビアン当事者はいます。「将来、結婚したカップルと同様に好きな人と一緒に過ごしていても、財産の相続が認められない」「親がレズビアンに理解がないので、将来紹介できるのか心配」など、さまざまな不安を抱える当事者たち。LGBTsについて語られるようになった今。よりたくさんの人にセクシュアルマイノリティが受け入れられ、明るい未来への一歩を踏み出せることを願っています。

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◎この記事を書いた人・・・Honoka Yan
モデル/ダンサー/ライター/記者/LGBTs当事者。ジェンダーやセクシュアリティ、フェミニズムについて執筆。タブーについて発信する日本のクィアマガジン「purple millennium」編集長。Instagram : @honokayan