ゲイカップルは気持ち悪いと言われた日

今から書くのは今日起こった出来事です。
昔々の話ではありません。2020年、令和も2年目に差し掛かった、まさに“今”起きたことなのです。
正直、こんなに最悪な体験はそうあるものではありません。

お客様のお部屋探しをしていたときのこと

今日のお昼頃にIRISのスタッフがお客様に紹介する物件を探していました。
IRISでは、自社管理の物件ではない場合、お部屋をご紹介する前に、一件ずつ管理会社等に電話で相談を行い、確認が取れた物件のみをご提案するようにしています。そのため、本日もいつも通り確認作業をすすめていました。

その中で、管理会社から「お客様はどんな方か」と質問されることがありました。一人暮らし用の物件でない場合、この手の質問自体はそれほど珍しいものではありません。ですので、IRISではお客様と事前にどこまで管理会社に伝えても大丈夫か確認したうえで会話を進めます。
今回はお客様から関係を正確に伝えても構わないという許可を得ていたので、「男性同士のカップル」であると伝えたところ、電話口の男性から「気持ち悪い」と吐き捨てられ、一方的に電話を切られてしまいました。
スタッフからすぐに上司である私に報告があり、事実確認をするために私が管理会社へ連絡したところ、先ほどの男性は言葉を濁しつつも「営業妨害だから二度と連絡をしないでくれ」と言われました。

偏った価値観を正しいと疑わない人たち

私達は驚愕しました。確かにまだまだ保守的な業界。
それでも『LGBT』という言葉が広がりつつある令和。
不動産業界も昔に比べたら大きく前進しているはずがその方は昭和のままで時の流れが止まってしまっているようでした。

今の日本では、同性カップルを含めたマイノリティ達が物件を探すとき、嫌な体験をすることがあったり、ご本人たちが胸を張って同棲すると公言しづらい環境にあります。
それらの要因は、今回のように差別的な発言や態度をする人たちが存在するためです。

10年以上前の話ではありますが、私自身、当時のパートナーと初めての同棲をしようと、ルームシェアで物件を探していたときは、審査の時に男女のカップルや新婚さんと比較され、なぜか礼金を上乗せされたり、関係性を細く聞かれて困った体験がありました。

現在も、L G B Tsの存在は他人事として思い込み、平気で差別的な発言をする人達が存在するのもまた事実です。個人の思想や価値観は自由であるべきですが、ビジネスをする上ではたとえそれが業者と業者の会話で、直接お客様の耳に入らなかったとしても、品格と節度をもって、真摯に対応すべきだと私は思います。

バイアスを生みかねない「管理会社」という存在

せっかくなので、なぜこんなことが起きるのか少し分解してお話をしましょう。

交渉力

これは不動産賃貸仲介業における媒介物件の実質的な力関係を表したものです。
内見後にお申込となった場合は、下記の通りの流れで入居までの手続きが進みます。

  • 1、入居者様が申込書に記入する
  • 2、管理会社へ送付する
  • 3、保証会社の審や管理会社の審査
  • 4、大家さんの審査
  • 5、審査に通過したら契約、入居。

媒介物件の場合、審査を通す上での最終決定権は貸主である大家さんにあります。
賃貸借契約は私人間の自由契約ですから、最終的に大家さんが拒めば、どんな理由であれ入居することはできません。

ですが、実際には大家さんにたどり着く前に、管理会社や申込書を受け取った担当者の見解ベースで情報がストップすることがあります。
管理会社は立場上、トラブルを避けようとします。それゆえ、「リスクが高い取引は行わない」という心理が働きやすい状況にありますが、「リスク」を判断している裏側に明確な根拠がない場合もあり、個人的な感覚や「よくわからないから」といった単なる不勉強でしかないこともあります。

そのため、実際には大家さん側が、同性カップルを含めたマイノリティ達に対して、ネガティヴな印象を持っていなくても、物件を紹介できないケースが多々あります。
管理会社が大家さんの意に反して、利益相反する行動を取ることもあり得るということです。

もちろんすべての管理会社がそうというわけではないのですが、審査の内容がブラックボックスである以上、それが起こりやすい状況にある事実は揺るがないでしょう。

LGBTs当事者の3人に1人はお部屋探しに困っている

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こうしたことから、同性カップルを含めたLGBTsの当事者達がお部屋を借りづらいという課題にぶつかってしまいます。

わざわざ同性カップルだという必要はないのではないか?ルームシェアとして話を通しても良いのではないか?と思う方も居ると思いますが、はっきりと関係を伝えたほうが、あらぬ疑念を生まず、審査に通りやすくなることも少なくありません。
もちろん、アウティングになるような行為はIRISではしませんが、ルームシェアと言い張ると逆に選択肢が限定されてしまう場合もあるのです。(詳しくはまた別の機会に書こうと思います。)

今回は現代の日本で起きている問題と事実を、より多くの方に知っていただきたいと思い、事例をご紹介いたしました。

冒頭で書いたように「ゲイカップルは気持ち悪い」と発言された方は、特に悪気もなく発した言葉でしょうが、それを聞いた当事者からすればとても辛いものです。
生きていく上で重要な衣食住。その住環境を提供する我々不動産業界のプロが、果たして社会の変化に無関心でいいのでしょうか?
私たちの役割はなんなのか、今一度、原点に立ち返って考えていただきたいなと思います。

この記事を読んでいる同業者の方がいらっしゃいましたら、どうか他人事ではなく、自分事に置き換えて考えて頂けると嬉しいです。
もし自分の家族が誰かに差別され、嫌がらせを受けたら嫌な気持ちになりませんか?私たちマイノリティは常にそういった恐怖感や課題の中で生きていることを忘れないで欲しいです。

我々、IRISは「みんなが自分らしく生きられる社会を作る」ことをミッションにしています。ですがそれは一社の取り組みでは実現できません。
少しでも一緒に社会をアップデートしたいと考えていただける方はぜひご連絡ください。みんなでよりよい社会の実現を目指していきましょう!

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◎この記事を書いた人・・・あきひろ

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