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2016年11月下旬からスタートする「渋谷区LGBTコミュニティスペース事業」のキックオフ・イベントが11月3日・文化の日に開催されました。今回はこの事業とイベント内容について紹介したいと思います。

渋谷の“アイリス”で開催されるイベント

「コミュニティスペース」という名称ですが、LGBTs向けの専用スペースがあるわけではありません。この「渋谷区LGBTコミュニティスペース事業」は、イベントとして開催される“場”のようなもののようです。会場は渋谷駅から徒歩5分のところにある渋谷男女平等・ダイバーシティセンター<アイリス>。名前が一緒なのでややこしいですが(笑)、渋谷区の花がアイリスなんだそうです!

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【2016年】(※11/8運営側の情報をもとに日時を修正)
11月29日(火) 14:30 – 17:30(途中参加/退場自由)
「みんなの理想のコミュニティスペースを教えて!」
12月17日(土) 18:30 – 20:30
ミニプレゼン:ぷれいす東京(HIV予防/サポート)+フリートーク

【2017年】
1/11(水) 18:30 – 20:30
ミニプレゼン:ぷれいす東京(HIV予防/サポート)+フリートーク
2月 シューカツ/新生活(仮)
3月 新学期・新生活(仮)

●会場:渋谷男女平等・ダイバーシティセンター<アイリス>
(東京都渋谷区桜丘町23-21 渋谷区文化総合センター8F)
https://www.shibu-cul.jp/guide_airisu.html
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上記のようなイベントの最新情報が、この事業を受託・運営するNPO法人 東京レインボープライドのツイッターやfacebookで随時公開されるようです。

https://www.facebook.com/Tokyo.R.Pride

これらのキックオフとして、11月3日にトークイベントが開催されました。テーマは大きく下記2つです。同性パートナーシップ条例の成立にかかわった推進会議のメンバーが、当時のことを振り返りながら話してくださいました。

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【第1部】条例成立までの成り立ちを振り返る「これまで」
パネリスト:長谷部健氏(渋谷区長)、中川重徳氏(弁護士)
聞き手:杉山文野氏(東京レインボープライド共同代表理事)

【第2部】LGBTの若者が期待する、コミュニティスペースの「これから」
パネリスト:藥師実芳氏(ReBit代表理事)、他ReBitメンバー
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「パートナーシップ証明書」は1年間に15組

渋谷区が同性カップルに「パートナーシップ証明書」の発行を始めたのが2015年11月5日で、ほぼ1年が経ちました。この1年間に登録されたカップルは15組いるそうです。

条例のきっかけは約10年前に遡ります。最初のきっかけは東京レインボープライドの杉山文野さんと、当時は渋谷区の区議会議員だった長谷部健さんがグリーンバードで出会ったことでした。杉山さんのつながりでたくさんのLGBTs当事者がグリーンバードに参加しており、それを目の当たりにした長谷部さんは驚き、議員という立場で何かできないだろうかと考え始めたそうです。そして約5年前、表参道で信号待ちをしていた時に長谷部さんから「同性パートナーの証明書を発行したらどうかな?」と杉山さんに提案したことから、条例の構想が具体的にスタートしていきました。

条例成立に向けてつくられた推進会議は8名で校正され、杉山文野さん曰く「メンバーはご年配の方々」だったそうです。最初はわからないことも多かったため、まずはLGBTsに関する知識の共有から始まったんだとか。「当事者がどんなことに困っているか知りたかった」ということで、資料を集めたりLGBTsのドキュメンタリーを見たりして、少しずつ前進していったようです。

大きな一歩だけど、遅すぎた一歩

推進会議メンバーの一人だった弁護士の中川重徳さんは「大きな一歩だけど、遅すぎた一歩」だと語ります。こんな当たり前で大事なことが、なんでもっと早くに取り組まれなかったのだろうか、と。中川さんはとても使命感に溢れる“スーパーアライ(笑)”で、トークイベントで「当事者のため!当事者が使えない条例じゃダメなんだ!」と熱く話していた姿がとても印象的でした。

中川さんが指摘されていたのは申請にかかる費用です。公正証書が2枚必要になるため、実際6~8万円の費用がかかってしまいます。費用負担が大きくなってしまうため、もっとハードルを下げられないかとギリギリのところまで議論を重ねた結果、条件付きで公正証書1枚でも可能になったそうです。その条件は財産の形成過程など区が規定するもので、「パートナーシップ証明を行う場合の確認に関する特例」として適用される場合、15,000円程度の負担で申請が可能です。ちなみに1年間に申請した15組のうち、8組が公正証書2枚、7組が公正証書1枚での申請だということでした。

また同性パートナーシップ条例についてWebでアンケートを行ったところ、3週間で10~70代の約700人の回答があり、約8割が6~8万円の負担は“高い”と回答したそうです。他にも条例に関して病院の面会や会社の福利厚生、相続などさまざまな声が挙がっていたが、特に「証明書があると心理的に安心できる」「社会的な認知が広がった」という2点に関する意見が多かったそうです。実際に申請したのは15組だけですが、「社会的な認知の広がり」は渋谷区に限らず多くのLGBTs当事者が実感しているところであり、それだけインパクトの大きい取り組みだったと思います。

マジョリティの意識変化をこの街で!

同性パートナーシップ条例が公表されてから、渋谷区には約4,000件の問い合わせ(そのほとんどが否定的な内容!)があったそうですが、実際にメディアで好意的に報道されるようになってそうした声はなくなっていったそうです。

渋谷区長の長谷部さんは「マジョリティの意識の変化をこの街で起こせるかが重要です。アライの人をどのように増やしていくかが、次のステップ!」と話していました。その象徴となるのがレインボーアイリスです。このマークはアライのシンボルとして今後使っていくということでした。
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コミュニティセンターの必要性

イベントの第2部ではコミュニティセンターについて語られました。ReBitのメンバーはコミュニティセンターが必要な理由について「仲間と出会うため」「(LGBTsに関する)情報と出会うため」「自分を肯定するため」「(当事者とアライが)一緒に考えるため」など、思い思いに語っていました。レズビアンであるメンバーの一人は「最近まわりに子育てを希望するレズビアンが増えてきた気がする」という話から、コミュニティセンターで子育てをする当事者の会などもあると良いだろうという意見もありました。

今回はキックオフのイベントでしたが、この「渋谷区LGBTコミュニティスペース事業」は11月下旬からが本格始動です。今後ここでどのような活動が展開されていくのか、とても楽しみですね!私たち“IRIS”のメンバーも、ぜひ関わっていきたいなと思います^^

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◎この記事を書いた人・・・池澤廣和
これまでアート、デザイン、web、マーケティング、雑誌連載、大学講師など幅広い仕事をする一方で、LGBTsの映画祭を福岡で企画したりしてきました。IRISのホームページではLGBTs関連の記事を書いたりしているので、随時ネタを募集しています!