先週、下北沢の本屋B&Bにてライフネット生命保険会長の出口治明によるトークショーがありました。「B&B」とは「Book」&「Beer」の略で、本を読みながらビールが飲めるというおもしろいコンセプトのお店です。トークのテーマは「お金」。ここではその内容を、かいつまんでご紹介したいと思います。

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▼テーマ
「出口さん、お金って何ですか? 働くって、どういうことですか?」

▼出演
出口治明(ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEO)
安藤美冬(フリーランサー/コラムニスト)
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あなたがお金に不安を感じる理由

20代や30代など特に若い世代を中心に、漠然とお金について不安を感じている人が多いのではないでしょうか。

「年金はあてにならないし、将来が不安」
「いくら貯金すればいいのかわからない」
「勤めている会社だって、いつ何があるかわからない」

出口さんによると、こうしたお金の不安は「リテラシーが低い」ことから生まれるとのこと。つまり「わからないから不安」ということです。特に現代はテレビでもネットでも不安を煽るような情報が溢れているし、海外に比べてお金について学ぶ機会が少ないし、お金リテラシーを身に付けるのは簡単ではありません。

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お金が貯まらなければ、働けばいい

「定年で仕事を辞めなければいけないという概念は捨てた方がいい」と出口さんは語ります。60歳になって老後の資金が貯まっていなければ、また働けば良いのだと。少子化で人口が減るということは、社会全体で考えると人手が不足するということで、仕事はいくらでもあるんだからと。もし貯まらなくても、働けばお金に困らない・・・そんな発想があれば、たしかに不安が軽くなりますね。

また、年金に頼るよりも自分で貯金を・・・と考えている方も少なくないでしょう。年金についても、出口さんらしいシンプルな考え方を教えてくれました。「国より安全な金融機関はない。銀行より確実に安全。国がつぶれる前に、銀行がつぶれるんだから」と。極端な話ではありますが、言われてみると納得です!

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お金がお金を増やすのは嘘!

確実にお金を増やす方法・・・それは「自己投資」だと出口さんは語ります。例えば手元に100万円あって、それを投資によって1,000万円に増やそうと思ったら、人並み外れたスキルと運が必要です。しかし、もし100万円で「自己投資」することによって給料が1.5倍になったら、生涯賃金が大幅にアップします。お金がお金を増やすのではなく、お金を増やすのは自分の価値ということです。

もちろん投資が全くナンセンスというわけではありません。出口さんは「財産三分法」という考え方を教えてくれました。それは、自分が持っているお金を『財布』『投資』『預金』の3つに振り分けるということです。

●財布・・・今日、明日で使うお金など、生活のために必要なお金を財布に入れる。
●投資・・・なくなっても困らないお金は投資に回す。資格取得の勉強など自己投資に使うお金や、恋人へのプレゼントも、投資に含まれる。
●預金・・・残ったお金を貯金に回す。貯蓄の役割を果たし、財布のお金がなくなったら補充もできる。いつでも引き出せるという「流動性」が大切。

投資に回すのは「なくなってもいいお金」という点が重要だと出口さんは話します。「金利安いから、銀行に預けるよりブラジル債を買おう」というのは間違い。銀行はすぐにお金を引き出せることが重要なのであって、お金が増えるかどうかは重要ではないそうです。だから、「銀行にお金を預けていたら損なのかな?」と不安に思う必要もありません。

「流動性は大事。例えば住宅ローンはお金を鎖でつないでしまうようなもの。住宅ローンは高度成長期にできた制度。右肩上がりが前提。人口が増えて、GDPが10年で倍になり、住宅の価値が上がっていく時代。今は家がどんどん余っていく時代だから、慎重に考えた方がいい。」

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Buy and forget, sell and forget.

投資で儲ける方法はとても簡単でシンプル。安いときに買って、高いときに売ればいい(笑)。でも実際には、そう上手くはいきません。損するときもあるし、いつ買えばいいのか、いま売らないと損するのか、不安は尽きないし、精神的に落ち着かないものです。

だから出口さんは「Buy and forget, sell and forget.」が大切だと話されていました。「買っても売っても、すぐに忘れて考えない」のだと。そして、あまり考えずに投資する方法のひとつとして「ドルコスト平均法」がオススメされていました。「ドルコスト平均法」とは同じ銘柄を毎月定額分だけ買い続けるという方法です。この方法なら価格が安いときにたくさん買うことができるため、「高いときにたくさん買ってしまう」という失敗をすることがありませんし、定額購入だから考え過ぎて不安になることもありません。

※ドルコスト平均法にもメリット・デメリットがあるため、投資の際にはご注意ください。

LGBTs当事者も、保険の考え方は同じ

ライフネット生命を立ち上げた出口さんは、保険に関する考え方もいたってシンプル。「社会人が最初に入るのは、就業不能保険だけでいい。結婚したら、夫婦それぞれがそれに入る。子どもができたら初めて生命保険に入ればいい」と出口さんは話されます。就業不能保険はあまり馴染みがないという方も多いのではないでしょうか。これは病気やケガで働けなくなったときに、生活費をサポートしてくれる保険です。子どもがいない間にお金で困るのは、自分が働けなくなって生活ができなくなるケースなので、入るべきなのは生命保険より就業不能保険だというのが、出口さんのお話でした。

▼ライフネット生命の就業不能保険
https://www.lifenet-seimei.co.jp/product/disability/

生命保険は家族や子どものための保険なんですよね。ライフネット生命といえば、IRISのホームページでもご紹介しておりますが、同性パートナーを死亡保険金の受取人として指定できるようになったことが昨年話題になりました。そこで出口さんにこんな質問をしてみました。

「LGBTs当事者の保険の選び方について、アドバイスがあれば教えてください!」

出口さんは次のように答えてくださいました。

「LGBTsの方も基本的には同じです。パートナーがいて、もしどちらかの収入が多いようであれば生命保険に入っておくといい。万が一の時に困らないために、何が必要かということです。」

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キャリアアップではなく、キャリアスライド

働き方についての話も、出口さんらしいおもしろい内容でした。

「大企業は日本に約3,500社(※上場企業数)しかない。だから自分の理想の仕事がその中にある確率なんて、ほとんどない。仕事はご縁。恋愛と一緒。ご縁だから、誤解もいっぱいある。離婚する人がいるように、仕事を辞める人がいるのも当然のこと。おもしろいことにスライドして飛びつくのは悪いことじゃない。キャリアアップではなく、キャリアスライド。世の中のバブルおじさんは、中途半端なことをすぐに批判するけど。笑」

「中流が多い国は安定する。それは、みんなが上を目指すことができるから。二極化して格差ができるのは、あまり良くない。そして中流を育てるのに大切なのは教育。国際的に見ると、日本は教育に力を入れていない。大学の進学率も50%ほどしかない。」

「中長期のプランは、3年計画が基本。10年は長すぎてあまり現実的じゃない。最近では大企業も3年計画を立てるところが増えてきた。」

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映画を観ることだって旅なんだ

ここでご紹介しているのはほんの一部ですが、出口さんの考え方の特徴がわかる楽しいトークショーでした。最後の方で、「旅することは大切だけど、海外に行くことだけが旅じゃない。例えば映画を観に行くことだって旅だと思う」とおっしゃっていましたが、このトークショーも自分にとっては旅のような体験です。いろんな気付きや発見があって、とても有意義な旅でした。

出口さんについて、関心のある方は下記の本をぜひ読んでみてください。

▼働く君に伝えたい「お金」の教養 人生を変える5つの特別講義
https://honto.jp/netstore/pd-book_27548424.html

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◎この記事を書いた人・・・池澤廣和
これまでアート、デザイン、web、マーケティング、雑誌連載、大学講師など幅広い仕事をする一方で、LGBTsの映画祭を福岡で企画したりしてきました。IRISのホームページではLGBTs関連の記事を書いたりしているので、随時ネタを募集しています!