2015年に始めて渋谷区に導入されて以来、現在208の自治体で導入されているパートナーシップ制度。

みなさんは、この制度がどのくらいの法的効力があるのか、どんなことができるのか、ご存じでしょうか?

本記事では、そんなパートナーシップ制度の法的効力の有無と、パートナーシップ制度でできることについて解説していきます。

パートナーシップ制度に法的効力はあるのか

パートナーシップ制度に法的効力はあるのか

法的効力があるのかないのか、結論を言うと現在の日本のパートナーシップ制度には法的効力はありません。

あくまでパートナーシップ制度は「その自治体の中で2人の関係を認めます」という制度なのです。

パートナーシップ制度は、法的効力の無い関係なので、婚姻関係を提示しなければならないとき、パートナーシップ制度では門払いを受けてしまうこともあります。

「要綱」と「条例」、2種類の制度の違い

「要綱」と「条例」の2種類の制度の形

日本で最もパートナーシップ制度を早く導入したのは渋谷区、次いで世田谷区ですよね。この2つの自治体の制度の違いをご存じでしょうか。

大きな違いは「要綱」と「条例」であることです。

「要綱」とは

「要綱」とは、お仕事などで必要になるマニュアルのようなもので、首長や市長、区長の権限で作られたものです。要綱には法規制がありません。

あくまで要綱は、行政サービスが平等に行われるためのマニュアルの一部ということです。世田谷区を始めとして、多くのパートナーシップ制度は、要綱です。

要綱によるパートナーシップ制度は、条例による制度よりも力が無い代わりに、お金がかかることは基本的にありません。手続きをしたら短い期間でパートナーシップ証明書を発行してもらうことができます。

「条例」とは

「条例」というのは、しっかりとルールを作り制定された各自治体による自主法です。

関係としては「条例」の方が「要綱」よりも上にきますが、法律(憲法)の範囲内で制定する必要があります。

渋谷区では「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」という条例を制定し、「男女の人権の尊重」「性的少数者の人権の尊重」を掲げています。

条例によるパートナーシップ制度は、力が強い分、申請時には公的書類が必要で、契約書の作成料(15,000円〜)と、手数料(300円〜)が必要になってきます。

主に渋谷区のパートナーシップ制度が条例となっています。

【2022年4月】パートナーシップ制度でできること

【2022年4月】パートナーシップ制度でできること

今現在、パートナーシップ制度利用で受けられる公的サービスを「みんなのパートナーシップ制度」というサイトから、一部ご紹介いたします。

  • ファミリーシップ宣言 (同居の子どもを家族認定できる)
  • 個人情報開示請求 (介護保険等に関する情報の開示請求ができる)
  • 罹災証明 (罹災証明書の交付)
  • 所得課税証明書、納税証明書 (委任状不要で申請可能になる)
  • 公営住宅 (入居申し込みに関して、同居親族要件を満たせる)
  • 家賃補助制度 (同一世帯として制度の申し込み申請が可能になる)
  • 住居確保保護 (住居取得のための給付金や融資金補助など)
  • 空き家活用保護 (リフォームや撤去の費用負担)
  • リフォーム支援
  • 医療機関 (症状説明,救急車同乗,緊急連絡先指名etc)
  • 福祉相談 (生活困窮者自立相談支援・福祉オンブズパーソン)
  • 犯罪被害者遺族見舞金 (遺族要件の適用,日常生活支援制度)
  • 公的職員の福利厚生 (結婚祝い金や死亡弔慰金の支給,結婚休暇•忌引休暇の取得)

パートナーシップ制度を受ければ、これらのサービスが全て受けられるというわけではありません。どのようなサービスを受けることができるのかは、その自治体の施策によって変わってきます。

自治体毎のサービス内容は『パートナーシップ制度の記事』で解説していますので、よろしければ参考にしてみてください。

チェック → パートナーシップ制度がある自治体の一覧

自治体・市区町村ごとにパートナーシップの申請が必要?同性カップルが引っ越す時

自治体・市区町村ごとにパートナーシップの申請が必要?同性カップルが引っ越す時

もし引っ越しをしたら制度利用はどうなるのかというと、それはその自治体によって異なってきます。

パターン①:都市間相互連携がある場合

まず、「都市間相互連携」を締結しているパートナーシップ制度導入のある都市間での引っ越しの場合。

「都市間相互連携」というのは、パートナーシップ制度の導入率が高くなってきたことで広まってきたものです。

「継続使用届出」を提出することで、証明書を返却したり、引っ越し先で改めて申請し直したりという手間が省け、利用を続けることが可能です。

パターン②:制度の導入はある場合

そして、引越し先にもパートナーシップ制度が導入されているけど、「都市間相互連携」をしていないという場合。

転出元(住んでいた自治体)に証明書や受領書を返却する必要があります。

そして、引っ越し先で改めて申請をすることで、再びその自治体・地区町村でパートナーシップ制度を利用することが可能となるのです。

パターン③:制度が導入されていない場合

もし、パートナーシップ制度を導入していない場所が引越し先だった場合。この場合も、パートナーシップ証明書がなくなりますし、受けられていた公的サービスも利用できなくなってしまいます。

ということで、パートナーシップ制度を利用していたカップルが引っ越す場合、引っ越し先でも制度を利用するのであれば、制度導入の有無などを調べる必要がでてきます。

また、各自治体で利用できる公的サービスにも違いが出てきますので、その辺りも制度利用の際には知っておく必要があるでしょう。

現在「都市間相互連携」を締結している都市は少ないようですが、2015年の渋谷区でのパートナーシップ制度導入を皮切りに、ここ7年間で制度の導入は大幅に増えています。

確定申告と扶養家族・配偶者


私事ではありますが以前、確定申告のお手伝いをするバイトをしたことがあります。確定申告を今までしたことがなく、今後の人生に役立てばと思い、応募しました。

従事させていただいてから数週間した頃、ある出来事が起こりました。それが今回、私がこの記事を書こうと思ったきっかけでもあります。

その日私は利用者さんの対応をさせていただいていたのですが、配偶者・扶養家族を入力する項目を見た時にこんなお話になったのです。

「パートナーシップ制度を利用したら、配偶者・扶養家族の欄に記入できるのですか?」

この時の私は分からなかったので、お答えすることができませんでした。私の住む自治体にはパートナーシップ制度が導入されていますが、「自分には無縁の話だ」と、当時は調べたことがありませんでした。
そして今回、記事を書くにあたって改めて調べ、当時の質問された答えが分かりました。

配偶者・扶養家族としては扱われないため、そこは空欄となります。

パートナーシップ制度に法的効力はなく、法によって認められた関係ではないので、確定申告などで配偶者や扶養家族としてそこに入力することは今現在はできないのです。

パートナーシップ制度を申請し、証明書をもらっていても、「家族として、国は認めていません」というような現実を突きつけられるようで、私は少し苦しい気持ちになりました。

それぞれが望む幸せを。

それぞれが望む幸せを。

パートナーシップ制度の導入が広まってきている現在、同性愛を認めることに何か大きな問題が起きているという風には見えません。

渋谷区の「条例」によるパートナーシップ制度は、「要綱」によるパートナーシップ制度よりも効力がありますが、そちらも、なにか問題があるようには見えません。 なぜ「同性婚」を導入して欲しいのか、それは「法的効力の有無」が大きく関係しているのではないでしょうか。

異性夫婦が享受できることを、同性になると許されない……。故に、差別感を抱いてしまう。「同性婚」という形に難色を示すのであれば、同性婚認証済みの諸外国のように「シビルユニオン」という制度の導入を検討してくれないのだろうか、と私は感じます。

日本はとても慎重な国民性があります。いきなり大きく動くことが怖いのなら、階段を築くことも考えて欲しいのです。それぞれが望む幸せを、それぞれが受け取れるような、よりよい国になっていってくれることを祈ります。

最後まで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。