昨今、話題になっている同性婚。

日本ではようやく、自治体がパートナーシップ制度を導入してくれたりするようになりました。それでも「今すぐ好きな人と正式に結ばれたい!」という方にとってはまだまだ物足りない状況かと思います。

では、アジア各国の同性婚事情はどうなっているのでしょうか。

本記事では、2022年4月時点のアジア各国への同性婚事情を解説していきます。日本の同性婚について知りたい方や、アジアの主要国の同性婚事情が知りたい方、参考にしてみてください。

初めに
IRISでは、すべてのセクシュアリティやジェンダー、人種、国籍、民族、職業、家族構成の人々が自分らしく生きられる社会を実現したいという思いを込めて「LGBTs」と表現しています。

主要7カ国で唯一、同性婚が認められていない日本

日本は主要7カ国(G7)に含まれる国の中で唯一のアジアの国です。G7には日本以外に、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、イギリス、イタリアが含まれており、各国の財務大臣及び、中央銀行総裁の方々がメンバーとなっています。

この7カ国に絞ってみてみると、日本だけが「同性婚を認めていない国」となっています。他の国々では、同性婚を認めているか、同性婚と同等の制度を導入しています。

日本における同性婚の現状

主要7カ国に選ばれている国というのは、先進国であり民主主義国家である国々です。そんな先進国、民主主義国家の中でも日本は同性婚を認めていませんし、現在も頑なに、様々な理由を付けて拒否をしています。
同性婚を認めたから先進国かどうか、というと全く違います。

ただ、「アジアの中でも唯一の先進国」として見たとき、その心の狭さ、考え方の固さに、少しショックを受けてしまうのも事実です……。
種の保存を理由に認めないとする発言もありました。しかし、日本よりもずっと早くに同性婚を認めてきた、あるいは婚姻に準ずる制度を導入してきた、している国々はどうでしょう。

本当に何か大きな問題が起きているというのなら、踏み出す前に様々な問題をクリアにする必要があり、難色を示す心も分かります。
様々な問題を含みながら、抱えながらも、同性婚が何かに大きく影響を及ぼしているとは見受けられません。

先進国、民主主義国家としてG7に選ばれている日本。いつか寛大な判断をしてくれることを願いたいです。

アジア各国の対応は?

ここからは、日本以外のアジアの国々の同性婚事情について解説していきます。

中国:同性愛の存在自体が認められていない国

中国の同性婚については、ニュースにも上がりませんし、同性婚についてどういった状況だと思いますか?

実は中国は、同性愛の存在自体認められていない国なのだと言います。

ILGA World「State-Sponsored- Homophobia」という資料を元に、認定NPO法人虹色ダイバーシティが日本語訳し、2021年1月までの婚姻状況をまとめた『性的指向に関する世界地図』というものが存在します。

その中で、中国は「法による制限がある国」に分類されます。子孫を残すことが親孝行であるとしている中国。
では、中国国内のLGBTsの方々はどうしているのかというと、”形式婚”をする方が多いのだそうです。
あるゲイの方がSNS上で、表向きは異性愛者として振る舞うために、形式婚をしてくれるレズビアンの方を探す投稿をするということもあったようです……。

法律の文章内でも”男””女”という言葉が飛び交い、「婚姻は男女双方の完全に自由な意思によるものでなければならない」とも記されているのが現状そうです。

韓国:同性愛の存在自体が認められていない国

韓国も中国と同じく、同性愛自体が認められていません。同性愛やトランスジェンダーについて、差別やいじめの存在もあるそうです。

ある、韓国人と日本人の韓国在住カップルは、動画投稿サイトで日常の生活風景をアップしているといいます。
「え、じゃあ別に問題ないんじゃない?」と思いますよね。

この2人の動画は、英語か日本語でしか表示されないように設定しているそうです。というのも、韓国人のパートナーさんは教師をしています。
なので、もし万が一生徒の保護者の目に触れてしまったら…。そういう訳で、韓国語では表示も検索もできないようにして投稿をしているのだそうです。

コメント欄では激励の声などが多くあるみたいです。

台湾:アジアで初めて同性婚を認めた国

その歴史から、日本に対して友好的だと有名な台湾。2019年にアジアで初めて同性婚を認めた国としても有名かもしれません。
この台湾の動きを得て、日本にもいい動きが流れてくるといいなぁ……などと思ってしまいますが、やはり導入してすぐ問題はあったようです。
台湾と日本のゲイカップルが台湾に婚姻届を提出したのですが、その婚姻届は受理されませんでした。(参考:NHK WEB

受理されなかった理由は、「同性婚を認めていない国の人とは結婚を認められない」というもの。2人はこのことに関して提訴しています。
実はこういったケースは結構多かったようです。マカオ人と台湾人カップルもやはり受理されなかったといいます。
しかし、日本人・台湾人カップルと異なったことが起きます。受理されなかったことを裁判にして、歴史的勝訴をしたのです。

これを受けて日本人・台湾人カップルも再度提出。しかし、またもや受理されず。2人は現在も「同性婚を認めていない国の法律を台湾で適用すべきではない」として戦っています。

タイ:婚姻と同等の権利を認められるパートナーシップ制度

タイでは、同性婚はできないものの、婚姻と同等の権利を認められる「シビルパートナーシップ制度」というのがあります。(参考:Wikipedia

この「シビルパートナーシップ制度」、実は同性婚を認めている多くの国で、同性婚の導入前に入れている制度なんです。その内容は国や地域によって様々だと言いますが、タイの場合は、

  • カップルのいずれかかがタイ国籍
  • カップルの双方が17歳以上

という場合に申請が可能です。

申請して受理されると、「双方の財産の管理権・相続権が法的に認められる」「養子が迎えられる」など、婚姻とほぼ同等の権利を法によって与えられます。

日本のパートナーシップ制度は、「自治体の条例で認めます」というもので法的効力はありませんので、法的効力があるかどうかというのが、大きな違いだと見受けられます。

イスラエル:国外で同性婚をすると婚約が認められる

イスラエルには、タイと同じく「シビルユニオン」があります。名前は異なりますが、「シビルパートナーシップ制度」と同じものです。イスラエルは、LGBTsフレンドリーな国としても有名で、同性カップルにも異性カップルにも同じように接する風習があるようです。

これだけ聞くと、日本や韓国、中国の「隠さねば」という雰囲気とは真逆で、なんだかよさそうに思えてしまいますね……。
しかし、やはり問題もあるようです。

問題点1:イスラエルでの同性婚は正式には認められていない

LGBTsフレンドリーなイスラエルですが、イスラエルでは同性婚が認められていません。イスラエルでは、ユダヤ教が浸透している為、敬虔なユダヤ教徒の間で同性婚への反対が根強く法制化までは至っていないそうです。(参考:読売新聞

しかし抜け道のようなものがあり、同性婚ができる国外で同性婚をするとイスラエルでも婚姻関係が認められるそうです。

問題点2:代理親にはなれない

イスラエルでは、独身男性は代理親になることができません。国内では結婚ができないので、同性カップルとして認められていても事実上は独身。

国内で代理親は望めません。外国で代理親に依頼し、子をもうけて帰国した場合は法的には自分の子供として認められるそうです。
同性婚を正式に認めているわけではないので問題はまだあるようですが、魔女狩りから逃れるかのように隠さなければならないような国と比較すると、かなりオープン。

地道に戦ってきた過去があるからこそ、イスラエルはLGBTsフレンドリーな国になったのだそうです。

あまり情報がなかった他の国々の同性婚事情

インド:同性間の性行為は不自然な違法行為

インドは元々「同性間の性行為は不自然な違法行為」とされていました。しかし、最近、最高裁で「違法とすること自体が違法である」と判決が下されたりもしています。(参考:BBCニュース

とはいえ、LGBTsコミュニティーが認められるまではまだまだ時間がかかるといいます。

ベトナム:まだまだLGBTsに対して発展途上

ベトナムでは、性別変更、同性同士の同棲はできるそうです。しかし、同性愛は精神病だとされてきた過去もあるので、いじめや差別もあるそうです。
そして同性婚についても認められていません。

インドネシア:LGBTsに厳しい現状

インドネシアでは、同性愛・異性装も認められていません。LGBTsに対してとても厳しいのが現状と言えそうです。

アジアの国々と同性婚の状況のまとめ

こうして調べていると、日本、中国、韓国は似たり寄ったりな状況だと感じられました。
日本の現状は憂うべきものがあり、視野を広げて世界で見てみてもアジアは他の国よりも同性婚・同性愛については遅れているように私は感じます。

「性的指向に関する世界地図」の中でも「死刑」としている国はほとんどアジア圏ですし、「禁固刑」「法による制限」のある国々が多いのです。

同性婚を認めている国は台湾。一歩手前なのがタイ。オープンなのはイスラエル。
主要国としてG7に選ばれている日本から少しずつ、波紋のようにいい流れが広まればと思います。最後までご覧いただき、ありがとうございました。