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ゲイをカミングアウトしているオリンピック選手は?【日本のLGBTQの現状を解説】

最近の一大イベントといえば、東京オリンピック。

オリンピックの開催について賛否両論の声はありましたが、無事に閉会を迎え、次のパラリンピックに胸を躍らしている人もいるでしょう。当たり前のようにオリンピックの試合をテレビで視聴する人は多いはず。ですが、実はオリンピックは数あるスポーツ大会のなかでも、LGBTQ含めた多様性におけるインクルージョンを示した大会となります。

さまざまなセクシュアルマイノリティ当事者であるアスリートたちが出場しましたが、特に注目を集めたのはゲイを公表している、イギリス出身の2021年高飛び込み金メダリストのトーマス・デーリー選手。この記事では、ゲイを自認するオリンピック選手や、今年のオリンピック開催地である日本のLGBTに関する現状などを紹介します。

ゲイでありオリンピック金メダリストであること

「私がゲイであり、オリンピックのチャンピオンであることを誇りに思っています。」

東京オリンピック・男子シンクロ高飛び込みで見事金メダルを獲得したイギリス代表のトーマス・デーリー選手(27歳)は、競技後に喜びを語りました。そんなデーリー選手をご紹介します。

オリンピック金メダリストとしての道のり

飛び込み選手としては過去最多のメダル数を手にしたデーリー選手。まさに才能溢れる選手である印象を持ちましたが、実は金メダルを獲得するまでには過酷な道のりがあったのです。

7歳で競技を始め、2008年に14歳という若さで北京オリンピックに出場。当時は7位の座に着きました。その後、2012年のロンドン大会では銅メダルを手に入れたものの、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、18位とメダル獲得には程遠くなってしまうことに。男子シンクロナイズドダイビング10メートル高飛び込みは、中国の代表選手により王者の座を長年奪われていましたが、今年の東京オリンピックで、マティ・リー選手とのナイスなペアパフォーマンスを魅せ、見事金メダルを獲得しました。

ゲイをカミングアウトしたアスリートとして

また競技に加え、自身のYoutubeで日本の設備に感激する姿や、会場で得意とする編み物をしている姿などが話題となりました。そして、ゲイをカミングアウトしているアスリートの一人であり、セクシュアルマイノリティとしての自身の経験や思いを競技後の記者会見で述べました。

デーリー選手は、プライベートでは自身がゲイであることをロンドンオリンピック後の2013年にカミングアウト。当時は「ゲイであることを公にすることで、サポートされなくなるかもしれない。ファンが受け入れてくれなくなるかもしれない。」とスポーツ選手としてセクシュアリティをオープンにすることの困難を抱えていたといいます。カミングアウトした後の2017年に、アメリカ出身の脚本家ダスティン・ランス・ブラックさんと結婚。東京オリンピック出場が決まると、2018年に3歳の息子の存在を公表。過去の大会でメダル獲得に及ばなかった時や、今回の東京オリンピックの輝かしい功績を残した時など、常に家族の暖かい存在に励まされていたそう。

試合後の記者会見では、「オリンピックに出場している国のなかには、LGBTであることが罪に値することもある。こうやって自分のセクシュアリティを公表してオリンピックに出場できることに、感謝しかありません」と答えました。デーリー選手が過去にゲイであることを隠して生きてきることで「負い目に感じていた」とも述べ、さらにいじめに遭った経験を告白。

同じように悩んでいる子供たちが大会を見て、夢を持って生きてほしいと加えました。「私がゲイであり、オリンピックのチャンピオンであることを誇りに思っています」「若い頃は、自分のアイデンティティを隠し負い目に感じていて、何も達成できないと思っていました。ですが今、何でも達成できることを証明できたかと思います」「私ができたように、セクシュアリティや人種関係なく、オリンピックのチャンピオンになれることを知ってもらいたいです」と述べました。デーリー選手の言葉は、国を超え、自分のアイデンティティに悩む人たちに希望と勇気を与えたことでしょう。

LGBTQ選手が過去最多となった今年のオリンピック

LGBTQ選手が過去最多となった今年のオリンピック

ゲイをカミングアウトしたデーリー選手のほかにもセクシュアルマイノリティであることを公にした選手はたくさんいます。ボクシング女子フェザー級銀メダリストのフィリピン代表ネスティー・ペテシオ選手は、「LGBTQコミュニティにいることを誇りに思う」と記者会見で語り、柔道女子52キロ級の決勝で日本と戦ったフランス代表のアマンディーヌ・ブシャール選手は、同性のパートナーがいることを公表しています。

今年の東京オリンピックは、8月3日時点でLGBTQアスリートの数が史上最多となる181人であることがわかっています。アメリカのスポーツメディア「Outsports(アウトスポーツ)」によると、その数は2016年のリオデジャネイロで開催されたオリンピックの3倍以上になるとのこと。LGBTQのアスリートが多い国は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなど、同性婚が認められている国が印象的です。7月23日に行われたオリンピック開会式では、旗手をつとめた選手のうち6人がLGBTQ当事者であることがわかっています。

オリンピック開催地である日本のLGBTQの現状は・・・?

オリンピック開催地である日本のLGBTQの現状は・・・?

今年のオリンピックに出場した選手のなかで、LGBTQを自認する人が5年前に比べて3倍多いことや、海外のアスリートが自身のセクシュアリティを公にしていることなど、LGBTQに関して寛容である各国と日本の現状にギャップを感じた人もいるかもしれません。

LGBT理解増進法はオリンピック開催を目前に見送り・・・

オリンピズムの根本原則が示されたオリンピック憲章には、LGBT含む「いかなる種類の差別」を禁止することが明示されています。オリンピック開催に向け、6月にはLGBTの理解を目的とした「LGBT理解増進法案」が国会に提出されました。一度は与野党が合意したものの、自民党の反対意見によりオリンピック開催を目前に法案は見送られることに。さらに議論の場では、議員による差別的発言も多く見受けられ、まだまだLGBTQの理解は不十分であることが現状です。

オリンピックの開会式では、歌手のMISIAがLGBTQを象徴するレインボーラーのドレスを身に纏い、国家「君が代」を歌いました。ですが、法案が見送られたことやG7のなかで唯一同性婚または、それに準じる法律が唯一ない日本。表面上の「多様性」を掲げる前に、政治家は社会の変化を見直し、それに基づいて考え方のアップデートや法律制定をすべきだと個人的には思いました。

今回の東京オリンピックでは、LGBTQを公表するアスリートが表に出ることで、LGBTQについて語られる機会が増えたことでしょう。同時に、日本が課題にしていることも浮き彫りになりました。これからより多くの人が、自分のアイデンティティで悩むことが少なくなるような社会を願っています。

◎この記事を書いた人・・・Honoka Yan

モデル/ダンサー/ライター/記者/LGBTs当事者。ジェンダーやセクシュアリティ、フェミニズムについて執筆。タブーについて発信する日本のクィアマガジン「purple millennium」編集長。Instagram :@honokayan

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