どうも、空衣です。トランス男性(FtM)でパンセクシュアルです。

今回は、トランス女性(MtF)当事者がトランス女性役を演じた作品をご紹介します。
トランス女性とは、出生時に男性として性別を割り当てられた女性を指します。

女性がトランス女性を演じた作品はまだ少ない?

これまでトランス女性役を、シスジェンダー男性が演じる機会が多かったかと思います。
最近日本でもトランス女性の登場する作品が見られるようになりましたが、大抵は男性がトランス女性役を演じていました。

トランス女性を演じた男性の俳優

たしかに性別移行を始めたばかりだったり、自分自身でさえトランスジェンダーだと気づいていなかったという場面からトランス女性の人物を描くのであれば、男性がトランス女性を演じることが妥当な場合もあるかもしれません。

しかし、そうはいっても数少ないトランスジェンダー作品の中で、女性ではなく男性がトランス女性役を独占することには問題があります。「トランス女性は男性なの?」「男性が女装したらトランス女性になるのか」と勘違いを助長してしまうリスクがあるからです。

多くの人はトランスジェンダーをメディアの中でしか知りません。「トランスジェンダーの知り合いがいる」という人の方が少なく、トランスジェンダーの当事者でさえ、自分以外に身近にトランスジェンダーの人を知らず、メディアを信じるしかないという現状です。そんななかで映画やドラマにおいてトランスジェンダーの誤ったイメージばかり植えつけられるのはまずいと思います。

これまでトランス女性の登場する作品では、古今東西で好ましくない演出が多くありました。
例えばトランス女性がいじめられたりからかわれたり、精神的におかしい人や薬物中毒者や殺人者という設定だったり、決して愛されることのない不運なセックスワーカーとして、物語の中に登場してきました。また、過度に“男らしさ”“女らしさ”を強調することも不要な演出といえます。トランスジェンダー当事者が生きていくために望んで身体治療をしているという現実を無視して、メディアでは「性別を変更しようとしたことが原因で病気になる・死亡する」とストーリーが作られることも珍しくなかったのです。当のトランス女性からは「非現実的にみえる」「共通点が見当たらない」と批判や不安の声が上がることも。
しかもトランスジェンダーへの差別的な表現は、同時に同性愛嫌悪や人種差別と結びつくことも多々ありました。

そのためトランス女性役はまず当事者であるトランス女性が演じるか、そうでなくとも女性役なのですからシスジェンダーの女性が演じるのが自然だといえます。あえて男性ばかりが女性の役を演じる理由はないと思います。

そこで、今回はトランス女性当事者がトランス女性役を演じた作品をご紹介していきます。

トランス女性(MtF)がトランス女性役を演じた映画

ナチュラルウーマン

映画「ナチュラルウーマン」公式サイト 2018年2.24公開
トランスジェンダー自身がその役を演じたことでも大きく注目されました。チリ出身の歌手ダニエラ・ヴェガ(ベガ)さんがマリーナ役を演じました。
愛し合っていた年上の恋人オルランドを亡くし、警察からは不審がられ、葬式に参加しようとするも偏見を持った遺族に嫌がらせや妨害を受けてしまいます。実際にトランスジェンダーの人が遭遇するであろう差別が立ちはだかりますが、表情を崩さず忍耐強く振る舞うマリーナが逆に印象的です。

ハイヒール革命!

映画「ハイヒール革命!」公式サイト
トランス女性である真境名ナツキさんの半生をつづった映画『ハイヒール革命!』が2016年に公開されました。トランス女性役を演じたという趣旨とはややズレますが、本人もドキュメンタリー部分に出演しています。真境名さんは早くから性別違和を感じ、中学校から女子制服で登校、高校では女子として登校し女子バレー部キャプテンを務めたそうです。

息子のままで、女子になる


こちらはサリー楓さんのドキュメンタリー映画です。女性として生きていきたいサリー楓さんは、一方で父の期待を背負う息子としての役割があったといいます。
“You decide.”という英題で、ロサンゼルスの映画祭でドキュメンタリー賞を受賞をしています。日本では2021年6月19日より上映開始。

片袖の魚

映画「片袖の魚」公式サイト
原案は、詩人・文月悠光さんの『わたしたちの猫』に収録されている『片袖の魚』。
日本初となるトランスジェンダー女性当事者の俳優オーディションが開催され、主役を演じることになったのはイシヅカユウさんです。
友人のトランス女性・千秋役には広畑りかさんが出演します。2021年7月公開予定。

Lingua Franca/リンガ・フランカ


イザベル・サンドバルさんが脚本、監督、編集、主演まで務めました。『Lingua Franca』は2019年のヴェネツィア国際映画祭で上映され、有色人種のトランス女性として初の快挙でした。

日本での上映は未定ですが、ストーリーを簡単にご紹介します。
ブルックリンに住むフィリピン人のトランス女性オリビアは、ロシア系ユダヤ人女性のオルガを介護して生活していますが、いつ強制送還されるか分からない身の上です。オリビアはトランスジェンダーだと告げることも知られることもないまま、オルガの孫であるアレックスと恋に落ちます。途中でパスポートの情報によって、トランスジェンダーだと知られてしまうのですが、それによって大きな変化があるわけではありません。

従来の描写では、「恋した女性がトランスジェンダーだったと暴かれると、主人公の男性は裏切られた気分になったり吐き気をもよおす」というステレオタイプが当たり前でした。そうしたイメージが観客に共有される時代はもう終わりでいいのではないでしょうか。

トランス女性(MtF)がトランス女性役を演じたドラマ

POSE/ポーズ


舞台は、1980年代後半のニューヨーク。“ボール・カルチャー”を通して当時のLGBTQコミュニティを映し出しました。『POSE』は異例の、総勢50人以上のトランスジェンダー俳優が登場する作品です。

『Glee』『アメリカン・ホラー・ストーリー』で知られるライアン・マーフィー監督は、「ストレートの男性がトランスジェンダー(※)役を演じる時代はもう終わり」とメッセージ性を強調しています。
(※)この文脈にトランス男性は当てはまらないはずなので、主にトランス女性のことを指していると思われます。

家族のような関係性である”ハウス”のマザーであるブランカを演じるのは、MJ・ロドリゲスさん。もう一つのハウスのマザーであり“ボール・カルチャー界”の絶対的女王であるエレクトラ役には、ドミニク・ジャクソンさん。
なおトランス女性で娼婦のエンジェルを演じたインディア・ムーアさんは、自身がノンバイナリーであることを公表しています。

オレンジ・イズ・ニュー・ブラック

ORANGE IS THE NEW BLACK
『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』は、女子刑務所を舞台にしたNetflixドラマで、2013年から配信開始され、シーズン7まで続くほどの人気を誇ります。美容師のソフィア役をラバーン・コックスさんが演じました。彼女はテレビ界のアカデミー賞ともいえる「エミー賞」にノミネートされており、トランスジェンダーと公表している人物では初めての出来事でした。

しかし黒人でありトランスジェンダーであり女性であることは、生活するうえで未だ安全とはいえず、ヘイト犯罪の対象とされたこともあるといいます。

SUPERGIRL/スーパーガール 第4シーズン

https://www.youtube.com/watch?v=wv7jAKfSG8w
こちらはDCコミックによる人気ドラマ。差別と闘う「ヌラ・ナル」(別名ドリーマー)というスーパーヒーローを演じるのは、トランスジェンダーの女性であり俳優のニコール・メインズさんです。ニコールさんはなんと8歳で自ら改名したそうです。

EUPHORIA/ユーフォリア


『ユーフォリア』は2019年から放送しているアメリカのテレビドラマで、日本ではスターチャンネルとAmazon Prime VideoのスターチャンネルEXで配信があります。ソーシャルメディアに翻弄されながら生きるZ世代の若者の物語です。

20代のモデルで俳優のハンター・シェイファーさんは、トランスジェンダーであることを公表しており、作中でもトランス女性役を演じています。ハンターさんは、ゼンデイヤさん演じる主人公ルー・ベネットの恋の相手であり(女性同士です)、親友であるジュールズ役を演じています。
彼女は17歳のとき、出身地ノースカロライナ州での理不尽なトイレに関する法律に反対して、トランスジェンダーの人々が自身の望むトイレを制限されないように父親とともに訴えを起こしたこともあります。

以上、9作品でした。
最近ではピクサーが、アニメーションでトランスジェンダーの女の子を演じる10代の子どもを募集しています。
Pixar Is Reportedly Looking to Cast a Young Trans Actor | them.

トランス女性当事者がトランス女性を演じた作品はまだ少ないですが、今後増えていくのではないでしょうか。

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チェック → トランスジェンダーの悩み解消に役立つ記事まとめ~FtM&MtF向け~

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◎この記事を書いた人・・・空衣
1996年、神奈川県生まれ。性別も住処も旅してきました。

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