どうも、空衣です。私はトランスジェンダーの男性(FtM)に該当し、パンセクシュアルでもあります。

LGBTsの存在認知が進み、必要な権利が守られるようになりつつありますが、それでもまだ誤解や差別もゼロではありません。今回はあまり認知されていないかも…と思う、トランス男性の差別にどんなものがあったか(あるのか)可視化してみます。もしもこのような場面を見たら、それは良くないことだと気づいていただければ幸いです。

トランス男性への差別はどのように行われるのか

トランス男性に、女性でしょ?というミスジェンダリング

残念ながらよくあることです。ミスジェンダリングとは、トランスジェンダー当人の生きている(実感している)性別とは異なる性別であえて呼んだり、不当に扱ったりすることです。トランス男性に対して「女性」「彼女」と呼んだり、逆にトランス女性(MtF)に対して「男性」「彼」と呼んだりすることを指します。これは明確な差別行為です。

不本意なカミングアウトや、アウティングされるリスク

自身が望んでいない状況下でも、性別の話を持ち出さなければならない場面はあります。
バイトや学校の登録などで、やむを得ずカミングアウトすることはありますが、それは望んでしているカミングアウトとは別なので、「本人が口にしているのだから周囲に伝えてもいいだろう」と勝手に判断されると、それはもはやアウティング(本人の了承を得ずにセクシュアリティを暴露すること)になります。

以前FtM当事者であろう人が同じ現場にいたとき、私が知らぬ間に「あの人もFtMだよ」と言いふらされていたことがありました。お互いに埋没※している環境で、それはありがた迷惑というよりは単なる迷惑になり得るので、言っていいことかどうかは事前に本人に聞く必要があるでしょう。
そのように常に「自分が望んでいない状況で」「意に反して」セクシュアリティを晒される危険があるといえます。

※埋没とは、社会の中で完全に自らの望む性別で生きること。

性器の形状を聞かれる

興味本位で公的な場で聞いていい話題ではないと思います。
他の人は、性器の形状を公にしながら生活しているのでしょうか?そうではないのに、トランスジェンダー相手なら大丈夫、ということにはなりません。

戸籍のせいで就職ができない

戸籍上の名前や性別が実際の生活と異なるので、採用されにくいケースや、採用されたのにその後やっぱり無理だと断られるケースがあります。
何かしらの特別扱いを望んでいるわけではないのに「前例がない」などと言われても、トランスジェンダー当事者も困ります。
はたまた「トイレや更衣室が用意できないから」という理由も、私にはよく理解できないところです。働くことが主な目的なのに、トイレや更衣室だけをことさら強調されるのは場違いな理由ではないでしょうか。

他の社員とは異なる措置が必要とされる場合も確かにあるかもしれませんが、それが本当に必要なことかどうかはその人の状況によります。まずは目の前の相手のことを知ってほしいということです。その上で対策が必要であったら取り入れればいいのではないでしょうか。

医療で想定されていないためアクセスしにくい

想定されているシスジェンダーの男性・女性の身体とは事情が違うため、どこでどんな治療を受けるべきかわからないこともあります。認識している性別と異なる扱いを受けるのが精神的に苦痛で、病院へ行けないという人もいます。トランス男性の場合は、内面や外見や名前が男性なのに婦人科に行かなければならないこともあり得ます。
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そしてこれは治療の歴史が浅い以上やむを得ない事情ですが、医療データもまだまだ少ないようです。血液や肝臓、寿命や妊娠可能性がいつまであるのかなど、トランスジェンダーの身体がどうなっているのかは客観的に言い難く、たとえ望む性別で生活できていても、身体的にマイノリティである事実は続きます。

トランス男性の存在は知られていない?

お茶の水大学がトランス女性(MtF)の入学受け入れを発表した2018年ごろから、トランス女性への差別が目立つようになりました。「トランス女性を装って性犯罪をする人が出る」とデマが出たり、トランス女性を「男体持ち」と蔑称で呼ぶような排除的な思想がネット上で広がりました。これは最初に述べたように、ミスジェンダリングという差別行為です。

そして、それに対応するように、「ではトランス男性はどうなんだ」と当事者が気にかけていない日常があぶり出される場面もありました。普段差別的な言動をしている人が都合のいいときだけ「トランス男性」を持ち出して、当事者の生活とかけ離れた話を展開するのは、極めて良くない行為でしょう。マイノリティの実態を無視して加害者に仕立てあげたり、過度に保護対象にしたりすることは、人を対等に見ていない証拠ですから、そういったことが減るよう願います!

トランスジェンダー差別を振りかえるオススメ映画

Netflix「トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして」
Netflix トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして
こちらは、トランスジェンダーの人たちが作品の中でどのように描かれてきたか?を辿ったドキュメンタリーです。製作者も鑑賞者も必然的にシスジェンダーしか想定されていない環境が多いなかで、トランスジェンダーの人たちも存在していて、昔から存在していたのだ、という当たり前のことに改めて向き合うことができる作品なのでオススメです。

以上、トランス男性への差別について現状をまとめてみました。
お読みいただきありがとうございます。

◎この記事を書いた人・・・空衣
1996年、神奈川県生まれ。性別も住処も旅してきました。