先週、LGBTsをテーマとした研究会に参加してきました。内容は「エンタテインメント」を軸に(?)、映画の話、カミングアウトの問題、政治の話題、トイレの問題など、実に多彩なテーマが3時間でギュッと凝縮されていました。今回はその中から印象に残った話題を、自分の感じたことなども交えていくつかご紹介いたします。

kadokawa

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第7回エンタテインメント街づくり研究会

「エンタテインメントを活用した街づくり」がテーマの会で、第7回は「LGBT」をテーマに、ゲストのプレゼンやパネルディスカッションを実施。

【概要】
日時 :2016年3月25日(金)17:30~20:30
場所 :株式会社KADOKAWA(東京都千代田区市ヶ谷)
https://www.facebook.com/entertainment.machidukuri.kenkyukai

【ゲスト】
村木真紀氏(特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ)
松中権氏(認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表)
岩渕潤子氏(グロスパシア株式会社 取締役・編集長/青山学院大学客員教授)
小形佳奈氏(中日新聞・東京新聞 社会部・記者)

【パネルゲスト】
辰巳清氏(株式会社アミューズエデュテインメント代表取締役社長)
小田島等氏(デザイナー/イラストレーター/漫画家)

【モデレータ】
玉置泰紀氏(Walker街づくり総研理事長)
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世間の意識はお茶の間から変わっていく

「エンタテインメント」を掲げる研究会ということもあり、映画やドラマ、マンガに関する話題もたびたび出てきました。そんな中でもグッド・エイジング・エールズの松中さんが「アメリカでは法制度などが進んでいるけど、人々の意識はお茶の間から変わっていったんだ」と話されていたのが印象的でした。LGBTsの地位向上に多大な貢献をしたと話題になった「スキャンダル 託された秘密」など、アメリカのドラマではLGBTsが描かれることが珍しくありません。日本でも「偽装の夫婦」が話題になりましたね。
ちなみに松中さんは「偽装の夫婦」の台本監修をされていたそうです。ドラマ終盤の展開は腑に落ちなかったが、作者の想いもあってそのまま放送され、案の定、当事者の間では大炎上したんだとおっしゃっていました。
また虹色ダイバーシティの村木さんは、ケイト・ブランシェット主演の映画「キャロル」を大絶賛。「レズビアンがどこにグッとくるか、よくわかっている!」という、当事者目線でも大満足の演出らしく、ぜひ一度観てみたいと思いましたw

【参考】
LGBTの地位向上に多大な貢献!
『スキャンダル』ケリー・ワシントンがGLAAD賞の栄誉に
https://dramanavi.net/news/2015/03/lgbt-glaad.php

『キャロル』 美しいのは映像だけじゃない。50年代レズビアンの「覚悟」
https://columii.jp/movie/column/article-632.html

当事者より、アライの方が人口が多い

青山学院大学客員教授の岩渕さんは、2014年から学生が中心となって活動している「青山BB(Beyond Borders)ラボ」を紹介。LGBTs当事者の学生をサポートすることをきっかけに立ち上がったグループで、ゲストスピーカーを呼んで勉強会をしたり、LGBTs等による学校のいじめをテーマにしたアメリカのWebアニメ「McTuky Fried High」の日本語吹き替え版を制作したり、幅広く活動しているそうです。岩渕さんが「当事者より、アライの方が人口が多い。自分と違う人がいることを想像できる人を増やしたい」と語っていたのが印象的でした。
※下の動画は、実際に日本語で吹き替えられたものです。

【参考】
青山BBラボ
https://www.aoyamabblab.com/

親へのカミングアウトは難しい

東京新聞でLGBTsの特集記事「多様な性 自分らしく生きる」を担当された小形さんは、初回の記事のテーマとして「カミングアウト」を取り上げたそうです。特に問題となっているのは、親へのカミングアウト。一番身近な家族であり、最も理解してほしい存在だからこそハードルが高く、拒絶されたときの心の傷も深くなります。記事内では「親に告白したら「気持ち悪い、出て行け」と言われた」、「ゲイの息子はいらない、おまえなんて死んだ方がましと言われた」といった実際に親から告げられた言葉も紹介されています。
先日、九州朝日放送でLGBTsを取り上げた番組の街頭インタビューでも、LGBTsに対して偏見はないけど、もし自分の家族だったら受け入れられないという意見がありました。カミングアウトの難しさを改めて考えさせられる、印象的なインタビューでした。

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【参考】
DUOMO 2016年03月16日放送
https://www.kbc.co.jp/tv/duomo/kensaku/index.html?mode=kensaku&n_corner=LGBT

海外では死刑になることも

LGBTsについて考えるとき、日本と海外の異なる点のひとつとして宗教的な背景があります。もちろん宗教の問題だけではありませんが、海外では同性愛者が死刑になることがあります。出会い系アプリやバーなどで「おとり捜査」が行われた事例もあるなど、積極的な制裁も珍しくないそうです。また同性愛者を死刑にすべきだと声高に政治家が発言しているような国もあり、各国のLGBTs事情の違いを改めて考えさせられました。

同性パートナーとの“家さがし問題”

デザイナーの小田島さんはトランス(MTF)の方とお付き合いをされているそう。そして2人で暮らす家を探すときは「とりあえず一人で2LDKくらいの部屋を借りて、後からそこで二人暮らしをする」とおっしゃっていました。これは珍しいことではなく、実際によくあるケースだと思います。不動産屋で二人暮らしを相談するのは、なかなかハードルが高いことです。
また虹色ダイバーシティの村木さんは、「(セクシャリティを明かさず)2人でルームシェアをしたいと相談すると、不動産屋がシェアハウスをオススメしてくることもあり、なかなか本音で相談できず困るという人も多い」と話されていました。
IRISでは同性パートナーと同棲を希望されている方をサポートしていますが、今回のお話を聞いて、困っている人が多いことを改めて感じました。

【参考】
今年こそ実現!はじめての二人暮らし
https://iris-lgbt.com/lgbts-dousei

今回のイベントでは、普段LGBTsと接点のない方が多く参加していらっしゃる印象でした。途中の休憩時間中には「LGBTsって趣味嗜好としてとらえれば良いのか、正直どう理解すればいいのかわからないんだよね・・・」などと語っていらっしゃる方もおり、まだまだ一般の方の理解は進んでいないようです。理解を深めてもらうことは決して簡単ではないと思いますが、IRISの活動もその一助になっていけるといいなと思います。

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◎この記事を書いた人・・・池澤廣和
これまでアート、デザイン、web、マーケティング、雑誌連載、大学講師など幅広い仕事をする一方で、LGBTsの映画祭を福岡で企画したりしてきました。IRISのホームページではLGBTs関連の記事を書いたりしているので、随時ネタを募集しています!