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私は現在、26歳のゲイです。
これは私が20歳の頃から5年ほど付き合った恋人との話です。

初めて会った時、ものすごくタイプで、とても緊張したのを今でも覚えています。
当時、彼は公務員で寮生活だった為で、会えるチャンスは限られていました。

特に東日本の震災時には、彼の仕事の都合で一ヶ月以上会えないこともありました。

付き合っていく中で彼と会える時間が少なく、「寂しい」という気持ちが強かったこともあり、些細なことでよく喧嘩しては、いつも彼を困らせていました。

その公務員の規則では、ある一定の役職につくか、結婚をしないと寮から出られません。私たち二人は同棲を望んでいましたが、公務員で働いている間は、彼も寮から出ることができませんでした。それでも諦められず、二人で話し合い、彼は公務員を辞め、「転職して一緒に住もう!」と決断しました。

しかし彼の母親は、彼が突然公務員を辞めると言い出したことにとても驚き、不審に感じたようでした。どうしてそのような決断をしたのか、彼は母親に納得してもらいたかったので、電話で思いを伝えようとしますが、なかなか理解は得られません。話はまとまらず、カミングアウトをするつもりはなかったのですが、彼は突発的にゲイであることを母親に打ち明けました。そして「今、付き合っている彼氏がいるんだ」と、私のことも紹介してくれました。

突然の告白は、すんなりと受け入れてはもらえませんでした。彼の母親は、自分の息子が“ゲイ”だと認めたくはなかったようです。というのも、彼には学生時代に五年間付き合った彼女がいたため、彼の母親は「まさかゲイであるはずがない」と信じて疑いませんでした。

そして、私は彼の母親に
「息子はあなたに洗脳されている。あなたは詐欺師だ」
と言われました。

この言葉を聞いたときは、とても辛く、例えようがないほど悲しかったです。でもそれ以上に、心の中に大きな疑問がこみ上げてきました。

どうして自分の息子の言葉を、理解しようとしてくれないのか?
どうして自分の息子の幸せを、まっすぐに願ってくれないのだろうか?

今思えば、彼の幸せを願ったからこそ、ゲイだと認めたくなかったのかもしれません。ゲイとして生きることは、大変なことがたくさんあります。もちろん、孫の顔が見たいという想いもあったそうです。それが叶わなくなるからこそ、認めたくないし、余計に辛かったのではないかと思います。

だけど、そのままにしておく訳にはいきません。当時の私たちは、なんとかしなければという想いから、二人で彼の実家を訪ねました。それは、それまでに経験したどんなことより、緊張する時間でした。とても不安で、押し潰されそうでした。しかし、何もしなければ前には進めないと思い、必死に堪えました。

彼の実家に着いた私たちは、一緒に食事をした後、彼の母親と数時間も話し合いました。その結果、「息子がゲイだということは理解できないし、あなたたちの関係も理解できない。だけど、理解する努力はしたい」と言ってもらうことができました。その後も、彼の母親と電話やメールでコミュニケーションを続けて、一年ほど経った頃には、同棲を認めてもらえました。

最初は全く理解が得られず、どうなることかと不安に思っていました。カミングアウトをすることが、必ずしも正しい訳ではありません。カミングアウトすることにより、傷つく人が居るかもしれません。

しかし、私たちLGBTsは異常ではないし、特別な存在でもありません。
どこにでもいる、普通の「人」です。
一人の人間として、自分の人生を歩むだけです。
だから、ゲイであることを隠す必要もないと、私は思っています。

私たちカップルは、とても貴重な経験ができたと思います。そして同時に「諦めずにチャレンジし続けること」の重要さを学びました。5年ほどの時間を一緒に過ごし、結果的に私たちは別れてしまいましたが、今でもお互いに良き理解者です。

これを読んでいるあなたも、カミングアウトすべきか悩むことがあると思います。決して正しい答えはありませんが、自分自身が後悔しないよう、しっかり考えて選択してください。あなたが決断したとき、きっとそこに新しい道が切り開けると思います。

※本記事で使用しているイラストはPESOさんより提供いただきました。
PESOさん、ありがとうございました!!
PESOさんのTwitter:@pesow

須藤あきひろ
IRIS(アイリス)の代表。1989年、宮城県生まれ。不動産会社を経て、金融業界で保険、証券、投資信託のリテール業務などを経験。近年は独立系FP(ファイナンシャルプランナー)として、LGBTsのライフプランをサポート。Web等での情報発信や各種コンサルティング、セミナー・勉強会の開催など、幅広く活動しています。
Twitter:@Fp07672818