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渋谷区と世田谷区で、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める証明書の発行が始まりましたが、このタイミングに合わせて携帯電話や不動産など、民間企業でもさまざまな動きが出てきています。中でも注目されているのは、以前IRISでも紹介したライフネット生命保険をはじめとする保険業界です。今回は生命保険各社の取り組みについて整理してみました。

生命保険各社の主な取り組み

●ライフネット生命保険
同居を証明する住民票と所定の書類を提出すれば、同性パートナーを保険金の受取人に指定できる。(https://www.lifenet-seimei.co.jp/rainbow/)

●日本生命保険
渋谷区の証明書があれば、同性パートナーを保険金の受取人として認める予定。(https://www.asahi.com/articles/ASHBY578CHBYULFA047.html)

●第一生命保険
渋谷区の証明書があれば、同性パートナーを保険金の受取人に指定する手続きがスムーズになる。(https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2015_064.pdf)

●アクサ生命保険
受取人に関する内規を見直し、第三者契約の受取人として同性パートナーを認める。(https://healthpress.jp/2015/11/post-2022.html)

●アスモ少額短期保険
渋谷区の証明書があれば、同性パートナーを保険金の受取人に指定できる。(https://healthpress.jp/2015/11/post-2022.html)

●その他
明治安田生命保険や住友生命保険なども、渋谷区の証明書で保険手続きを簡略化する方針。(https://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00307652.html)

 
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渋谷区の証明書が必要か?不要か?

各社とも同性パートナーを保険金の受取人に指定できる点は共通していますが、その方法は渋谷区の同性パートナーシップ証明書が適用される「公的証明タイプ」と、ライフネット生命保険のような「独自制度タイプ」に分かれています。

■公的証明タイプ(日本生命保険、第一生命保険など)
【メリット】渋谷区の証明書があれば、手続きが簡単である。
【デメリット】対象地域に住んでいない場合、手続きできなかったり面倒になったりする。

■独自制度タイプ(ライフネット生命)
【メリット】全国共通のルールであり、住んでいる地域による差がない。
【デメリット】渋谷区の証明書があっても、改めて証明手続きが必要になる。

渋谷区の同性パートナーシップ証明書は、同居しているかや独身かなど、保険金の受取人として適しているかというポイントを踏まえた制度であるため、保険会社が独自の確認を行う必要がないと判断しているようです。しかし渋谷区外の人が利用できないという不便さがあるのに加え、今後他の自治体に同様の制度が広がっていった際、自治体ごとに手続きが異なる場合は各社がどう対応するのかも不透明です。

一方、独自制度タイプのライフネット生命保険では、渋谷区の証明書は申込みの際に利用できず、住民票や所定の書類が必要となります。しかし渋谷区外の人も利用できる上、死亡保険金の請求に必要な「死亡診断書」の取得の際に医療機関への連絡や説明行うなど、サポート体制も充実しているようです。(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20151104/k10010294131000.html)

今後の課題

相続税法において同性パートナーは法定相続人ではないため、基礎控除や生命保険の非課税枠がありません。そのため死亡保険金の全額が課税対象となるのに加え、相続税が2割加算(※)されてしまいます。
※保険金受取人が配偶者や1親等の血族ではない場合、相続税が2割加算される。

相続税は税法上の問題であり、自治体の条例や民間企業の取り組みではクリアすることができません。将来的に相続税法が変更されることで、同性パートナーでも通常の相続と同等の仕組みになることを期待したいですね。

【参考】同性パートナーもOK!ライフネット生命に聞いてみた!
https://iris-lgbt.com/archives/721

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◎この記事を書いた人・・・池澤廣和
コミュニティーセンターhacoで写真展を開催したり、「アジアンクィア映画祭」を福岡で開催したりしてきたLGBTsのカルチャー系オーガナイザー。本業はWebマーケティングや大学講師など。